親愛会の理念と今後について〜平成30年度法人全体研修会〜

8月11、17日の2日間にわたって、一昨年・昨年度に続いてウェスタ川越2F会議室で法人全体研修会(夏季研修会)を行いました。
9月に入ってから、両日に参加できなかった職員向けに2回、みどりのまち郄沢ホールにて追加の研修を行いますので、昨年度同様にしゃべり言葉仕様のレジュメを作りました。
その中から、一部を抜粋して紹介します。
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<親愛会の理念>
「皆様方には、事のあるたびにお話ししてきたところですが、昨年度からの社会福祉法の改正により、これまでのように障がい者の施設・事業所なら支援費、高齢者の施設・事業所なら介護報酬としていただいた分を一定のルールで使っていればよいという「運営」から、完全に法人単位の「経営」、いわば経営資源(経営の三要素)であるヒト・モノ・カネのやりくり、さらに福祉には縁がないと思われてきた<経営戦略>、それに伴う<経営責任>などと、少しおおげさに言うとこれまで福祉とは相容れないと思われてきたことが求められるようになってきたのです。(※実際に、昨年の法改正は会社法に準じて作られています。)
その経営にどうしても欠かせないのが<経営理念>です。それでは、これまでの全国一律、タンキリ型の金太郎飴のような理念から脱却した、そもそも私たちの独自性を打ち出すはずの理念とは、どういうことでしょうか。
「障害が重くても同じ人間じゃあないか。ともに生きるべきだ=そういくら考えても所詮、観念の遊戯にすぎない。やはり障害の重い人と実際にかかわり、実際にひとつひとつ人間であることをたしかめていく作業をやることである。そのなかで、かかわる私どもの障害者に対する差別心や偏見をただし、これまでの見方、考え方を変えていく努力をすることである。だまっていて、見方・考え方は変わらない。直接のふれあいのなかで自分の弱さとたたかいながら努力することである。同じ人間じゃないか=という認識をたしかに自分のものにするために、そうした過程がぜひ必要なのである」(近藤原理著『障害者との泣き笑い三十年』「福祉の神からの提案」より抜粋)
これは、戦後、父、近藤益雄氏が始めた、制度化される前の、自宅開放型グループホームを継承し、昨年12月に87歳で亡くなられた近藤原理氏の「ともに生きる」を実践された思い(理念)がふつふつとしてくる一文です。
さて、親愛会の理念ですが、
第Ⅰ期「一人立ちする人」
39年前の親愛会発足当初は、軽度の知的障がい者を対象に、時代(「ともに生きる」“自給自足”)を反映した農作業を中心とした率先垂範をモットーに「のんき・根気・元気」の下、指導・訓練の結果、自立を目指した理念でした。この理念は、昭和45年施行の『障害者基本法』(平成23年最終改正)中の「障害者の自立と社会参加の支援」からのテーマでもあった「自立」が色濃いものとなっています。
第Ⅱ期「一人ひとりの個性を大切に」
国際障害者の十年を契機とした「ノーマライゼイション」「リハビリテーション」理念の高まりとともに、「障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会」(『障害者基本計画』(考え方))から“障がいも個性である”というとらえ方を反映した理念となっています。
第Ⅲ期「生きるを支える」
みどりのまち親愛開設を機に、これまでの障がい者を対象とした理念から、人生の各ステージごとの生きづらさを支援する(具体的に「支える」)としたものです。
①存在(価値)②家族(関係)③人生(役割)に整理し、支援・介助する側のポイントを明確にしたものとなっています。」
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<親愛会の今後>
「大きな壁が2つあります。
1つは、「2025年問題」団塊の世代が2025年までに後期高齢者に達することで、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されるという問題です。
もう1つは、「2040年問題」総務省:人口減少社会への対応をテーマにした有識者研究会による中間報告)人口減少と高齢化で行政の運営が最も厳しい人口構成にさしかかる。日本の人口が年間約90万人も減る一方で、団塊ジュニア世代が高齢者となり、65歳以上が約4000万人とピークに達する(人口11091.8万人、2.8人に1人が65歳以上、5.0人に1人が75歳以上、高齢者1人を1.5人の生産年齢人口が支える)。それには3つの大きなリスクがあって ①首都圏の急激な高齢化と医療・介護の危機 ②深刻な若年労働力の不足 ③空き家急増に伴う都市の空洞化とインフラの老朽化 があるというものです。
本日のテーマである親愛会の今後は、
◎20年後には必ずやってくる、いや、今この時点でもひたひたと押し寄せつつある、この事態を、どう乗り越えてゆくのか? そのための経営理念は? そのための経営戦略は?
に尽きると思います。
とりわけ、現在、深刻度を増す、あるいは予測される課題として、
ヒト:職員の人材不足 モノ:建物の老朽化 カネ:支援費・介護報酬の収入減
があります。
私たちは、これらを恐れることなく、クリアしてゆかなければなりません。
そのためのキーワードとして、
①「全員経営」
・自律分散型経営:一人ひとりの実践知を発揮し、どのように組織として事業を成功に導き、イノベーションを実現させていくのかが問われている
・ミドル・アップ・ダウン:ミドルを中心に回転していく組織、アイデアをもってエンジンになるようなミドルを育てていく
②「法人間連携」
・コレクティブ・インパクト:立場の異なる組織が、組織の壁を越えてお互いの強みを出し合い社会的課題の解決を目指すアプローチ
厚労省「小規模法人のネットワーク化による協働推進事業」
③「地域福祉」
・地域における公益的な取組 生計困難者相談援助事業「あんしんネット」(彩の国あんしんセーフティネット事業)
・福原地区福祉ネットワーク活動 持ち回り「公開講座」、生活困窮世帯の子供のための「子ども食堂」「学習支援」、高齢・障がい者等の「サロン」「ふれあい食堂」「ごみ屋敷片づけ」など
を提案し、進めていきたいと思います。」
(理事長 矢部 薫)