❝みつめむれつくり❞~人間関係改善のヒント~

『月刊福祉』12月号に、<介護福祉業界における人材定着のためのナレッジポイントと取り組むべきヒント第1回>(介護業界の人材動向と職員間の人間関係構築の重要性について)が掲載されていて、他団体の離職者に関する実態調査の結果が引用されています。

それによると、<前職をやめた理由>のうち「職場の人間関係に問題があった」は、(前職が介護関係の仕事)の第1位22.7%で、(前職が介護・福祉・医療関係以外の仕事)の第3位14.6%となっています。この10年来、いろいろな関係団体による退職理由調査にあって、いずれもかつての不満要因のトップを占めていた「給与に起因する理由」を抑えて、「人間関係に起因する理由」が上位にあります。ますます進む人材難の時代に、職員採用が思うように進まない状況下、まず、今現在、就業中の人材の定着に全力を挙げて取り組まなければならない中で、引続き“人間関係”が解決困難な課題となっているのは由々しき事態と言えます。

本誌記事は、「次号から職場の人間関係の改善に向けた取り組みについて、具体的な内容とともに確認していく」とありますので、期待したいところです。

ここでは、少し視点を変えて、先月1日に再放映されたNHK『こころの時代』「ふたつをひとつに ロボットと仏教」(2019.6.30放映)の中から、東京工業大学名誉教授 森政弘氏(92才)の“みつめむれつくり”、三つ目ロボットの作る群れの話を紹介します。

(ナレーター:“みつめむれつくり”は、森さんが1975年に製作した7体のロボットです。それぞれが前方と左右に3つの赤外線センサーをもち、仲間を見つけると追いかけますが、50センチ以内には近よらないようにプログラムされています。

すると興味深い現象が起こります。ロボットは単体ではランダムな動きをしますが、何体かが集まりはじめるとまるで鳥や魚の群れのように列を作ります。

“みつめむれつくり”が先駆けとなった自律分散制御システムは、現在ではロボット工学の分野を超えて研究が進んでいます。)

「沖縄海洋博に出展しました。おもしろい催しができました。

中央にコントロールするボスがおって、コントロールしているんじゃない。思うようにめいめい動いていて、みんな自分が自分をコントロールする。小さいコンピューターを持っているけど、それがお互いにぶつからないように、うまく群れを作って動いている。

実は群れの研究をして、群れを作ろうというと、また集まると皆さん思って、くっついちゃだめです。群れっていうのはね、ある程度距離、ある距離を離さないとだめです。

おもしろいことで、人間でも必要以上に近づくと失礼でしょ。それと同じことです。だからいかに近づかないかが大事なんですよ。」

日本のロボット工学の第一人者 森氏は、「ロボットを作るには人間を知らないといけない。人間の心を理解するためには、仏教ほど深く考究したものはない」と、仏教に関する著書、講演も多く、広く知られるところです。

私は、この“みつめむれつくり”の話が、とかく複雑になりやすい人間関係改善のワンポイント(ヒント)になるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

(理事長 矢部 薫)