社会福祉を支える人財とは?〜求められる職員像〜

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本「理事長のブログ欄」には、今まで広報紙『親愛だより』『親愛南の里』掲載の巻頭文(あるいは「和顔愛語」文)を、今年から本欄で継続させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。


社会福祉を支える人財とは?」

特に、社会福祉事業全般にわたって、近年の職員、特に直接支援に当たる職員の人材不足が顕著で、人材確保から人材育成等々、改めて「人材」に焦点が当てられております。対人援助技術をサービスとしている社会福祉事業にとって、初めから最後まで「人材」なのですから、事態は深刻なのであります。
人材とは何か。ここでは、親愛会が求める人材を確保し、求められる人材として育成している「福祉人材」について、あるべき姿としてこうあって欲しいとの観点からご紹介したいと思います。
いわゆる「求める人材」(これを「人財」と見る人も多い)として、多くの企業も共通と思いますが、能力もさることながら、何より「真面目」な人です。そして、社会福祉事業では、次に「優しい」人ではないでしょうか。

1、<自律ある真面目さ>こそ 福祉の「真面目さ」
では、真面目とはどういうことか。あの人も真面目、この人も真面目…、果ては遊び人も真面目、…悪人と言われる人も元は人の子…などと考えますと、世の中全員「真面目」と言っても過言ではないようです。しかしながら、とりわけ福祉にも、ある一定の真面目さが求められることも事実であります。
私たちの利用者である知的障がい者は、特に、正当な権利を理解、主張し、獲得することが不得手ため、本人の生まれと同時に始まるそれぞれの人生の段階において不利益を被ることもしばしば起こりえます。
平成18年度より、障がい者自立支援法下の福祉サービス事業所では、本人との契約に基づいた福祉サービスが提供されることになりました。しかしながら、その契約を実のあるものとするには、私たち支援する側が、個別支援計画に基づいた各種サービス提供の場で、利用者の自己選択・自己決定によって、より主体的な人生を支援する、すなわち“障がい者の権利を守る”、その「真面目さ」がまず求められるのであります。
そのためには、私たち支援者に、自分の側が自らを律することが求められます。言わば、福祉の真面目は、<職員自らが自分を律する真面目さ>でなければならないのであります。

2、<他律ある優しさ>こそ 福祉の「優しさ」
では、優しさとはどういうことか。あの人も優しい、この人も優しい…、果ては騙した相手すら元は人の子…などと考えますと、周りは全員「優しい」人ばかりと言っても過言ではないようです。しかしながら、とりわけ福祉には、ある一定の優しさが求められます。
私たちの支援の基本として「自分でできることは自分でやっていただく」という自立の原理があります。つまり、知的障がい者の支援では、私たちは身体障がい者でいう目に見えない「車イス」や「杖」の代わりをやっているのであって、歩ける人に車椅子を用意し、無理やり座らせることなどはしてはならないし、必要以上の優しさ、つまり相手の自立を妨げるような過保護の支援、ましてや優しさの押売りは要らない、つまり<他人の自律を支援できる>、すなわち他律ある優しさが求められます。ですから、人によって、また、時として、思う存分に情けをかけるのも、十二分に手助けするのも必要ですし、逆に、突き放して接するのも優しさなのであります。

以上の「真面目さ」と「優しさ」があれば、まずは求める人材として合格なのであります。
しかしながら、福祉を長く続けるには、ある「強さ」も必要なのであります。

3、<衆律ある強さ>こそ 福祉の「強さ」
職員を長く経験してきますと、自他共に「真面目さ」と「優しさ」ばかりでどうにもならないことに気付かされます。あの人も「真面目なんだけど」「優しさばかりじゃ」などと、陰に日向に指摘される毎日が続くと、モチベーションは下がりっぱなし…、いつまで持つか…という事態になりかねません。
ところで、社会福祉事業ばかりではないと思いますが、福祉の専門家として一定の評価を得ている人物を思い浮かべるところ、もちろん自律ある真面目さ、他律ある優しさもさることながら、「強さ」も凄いことに驚くばかりです。
もちろん、偉ぶる強さではなく、空威張りしているのでもない。「強く」あるのは、多くの人たちのうなずく「強み」が先ずあって、それが幾重にも重なって「強さ」を構築しているがごときであります。つまり、周囲の納得し受け入れられるツール(衆律)として、本人がいくつかの強みを持っていることに他なりません。例えば、○○のことだったら彼に聞けば良い…というような深い経験と知識に裏打ちされた知恵のごときものでも、あるいは具体的な技術でも良いでしょう。決して独りよがりではない強みの蓄積としての、<多くの人(衆)の自律を支援できる強さ>こそ、必要とされる福祉の強さなのであります。

以上、親愛会では、「真面目」「優しい」、さらに「強い」人材こそ、求め、求められる「人財」として位置付け、人材確保(育成)に取り組んでいきたいと思っております。
(理事長 矢部 薫)