AIによる社会変化の中で~❝衝撃の書❞が語る人類の未来~

昨年11月から、新型コロナウィルス感染第3波が日を追って拡大し、年の瀬に向かって、県内でも感染者数が急増する事態となりました。

私たち、福祉サービス事業を経営する社会福祉法人は、まずは「持ち込まない!」とばかりに職員に再三の注意喚起を行うなどして、各事業所の特性に合わせた「(コロナ禍での)新しい生活様式」の徹底を図っているところです。

私の自粛生活は、ついに、休日は録画しておいた番組を終日にわたり視聴する<テレビ漬けの生活>が続くことにもなりました。

その中で、12月7日に再放映された「NHK BS1スペシャル “衝撃の書”が語る人類の未来」(2020.1.1放映)は、イスラエル歴史学者ユバル・ノア・ハラル氏の著作『サピエンス全史』『ホモ・デウス』の全貌を、池上彰さんによるインタビューをまじえて、明らかにするものでした。

前半の「サピエンス全史“認知革命”」について、一部を引用して紹介します。

「人類の仲間ホモ属が初めて地上に現れたのはおよそ250万年前。

私たちホモ・サピエンス以外にも多種の人類が生きていました。サピエンスはアフリカで生まれた取るに足りない一種族に過ぎなかったのです。

ネアンデルタール人はサピエンスより脳が大きく力の強い種族だったのでした。にもかかわらずサピエンスはネアンデルタール人を駆逐し、ホモ属で唯一生き残ったのです。いったいなぜでしょうか?

「フィクションを信じる力」だというのです。実は私たちには特別な力がありました。それは、たとえばネアンデルタール人は実際に目にしたものしか、伝えられなかったそうです。ライオンなど実際に目に見えるものしか伝えられなかったそうです。

ところが、サピエンスは、“ライオンは我々の守護霊”だというフィクションを考え出し、その物語をみんなで共有できたというのです。

サピエンスはこのフィクションを共有するすることで、集団で協力して何かを成し遂げられるようになりました。これが認知革命です。

(中略)

サピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。

一対一で喧嘩をしたらネアンデルタール人はおそらくサピエンスを打ち負かしたであろう。だが、何百人という規模の争いになったらネアンデルタール人はまったく勝ち目はなかったはずだ。弱い種族であったはずのサピエンスはこうしてまた「集団の力」を駆使して、拡大してネアンデルタール人など他の種族に打ち勝っていったのです。

(中略)

人間が世界をコントロールするようになったのは、大勢と柔軟に協力できる特別の能力のおかげです。

何百万もの仲間と協力できるのは、われわれ人間だけなのです。

それはいったいなぜ可能なのでしょうか。

フィクションを生み出す力があるからです。」

一般に、フィクションとは<作りごと、虚構>の意味です。虚構などと言われると絵空事のように思えますが、たとえば会社は目に見える建物設備を含め、会社法に裏打ちされた<約束事>として存在している組織にほかなりません。

言うならば、私たち職員にあっても、約束事である社会福祉法を根拠に成立した組織(社会福祉法人)がまずあって、法人があると信じて(契約)、所属・就業している、ということになります。

これまでの人類の歴史の中で、実は繁栄の根底にある「フィクションを信じる力(協力)」こそが、あらゆる困難を乗り越えることができた優れた特質だというハラル氏の分析は、現在、世界中で困難にあえぐコロナ禍にあって、唯一、人類のもつ救いのように感じました。

番組は、“農業革命”“人類の統一”へと進んで前半を閉じ、後半の「ホモ・デウス」に入っていきます。そして、私たち視聴者は、現在のコロナ危機が、さらに加速させていくであろう“AIの活用による社会変化”を、世界の事例をとおして目の当たりにすることになります。

今般、コロナを機に、私たちは、社会福祉現場を担うエッセンシャルワーカーとして、福祉を必要とする人々の生命や健康の維持に努めていかなければならないという思い(使命)を、より強くしました。

番組を通じて、コロナ後のAIによる社会変化の中で、社会福祉事業をどう継続させていかなければならないのか、終始、考えさせられました。

私は、親愛会の理念『生きるを支える(Supporting one’s life)』の立ち位置を再確認し、人材確保(育成)、法人連携、地域包括ケアシステムなどの諸課題に、法人として、より柔軟に、かつ前向きに取り組んでいくことにほかならないのだと、思いました。

(理事長 矢部 薫)