新たな時代〜地域社会とのつながり〜

先日、ナカポツ事業の就労支援員から名刺の注文がありました。
親愛会では、平成21年4月より障害者就業・生活支援センターかわごえ(県委託事業、通称「ナカポツ事業」)を開始しました。近年、国の社会福祉施策は大きく動いて、障害者雇用率制度・特例子会社制度・障害者雇用納付金制度・在宅就業支援制度等、障がい者の就労支援に力を入れています。
ナカポツ事業のように、連日、会社訪問に明け暮れる職員にとっては、名刺交換は最初のあいさつ・・・、忘れてきたでは済まされません。
親愛会ではもう一つ多くの名刺を必要とする事業があります。翌年5月開始の埼玉県地域生活定着支援センター(県委託事業)で、法務省所轄の事務所・刑事施設他の多くの関係諸機関、福祉施設、その他一般企業等との調整を主な仕事としています。
現在の親愛会の名刺作成は、平成13年10月、親愛南の里開設時に、急きょ必要となった正門の案内板用マーク(ロゴマーク)に、私が作成したものが採用されたことに端を発しています。名刺そのもののデザインは、当時の事務職員がパソコン上に発案したものですが、以来、名刺係として、職員のオーダーが入るたびに、最優先で作成しています。
名刺といえば、私たち福祉職員は、長らく福祉関係者間の自己紹介にとどまって、役職でもないかぎり名刺のやり取りはごくわずかなものでした。
ところで、登山家の野口健氏は、外交官をしていた父親から、子供の頃より「名刺に肩書のない男になれ」と言われて育ったと、あるテレビ番組で話していたのを記憶しています。ところが、実社会では、その野口氏のように“肩書のない”名刺ではなかなか通用しません。親愛会でも、上記相談事業のように社会的に広がりをもつ事業の開始により、名刺の使用量は飛躍的に伸びてきています。
話は40年ほどもさかのぼって、昭和54年2月、社会福祉法人親愛会の発足にあたって、法人の当初の役員を国県市政界のそうそうたる方々が引き受けられていて、今でも、その附則にお名前の残る定款に目を通された人から、その経緯を聞かれることがあります。
他方、川越親愛学園開設2年後に、武州瓦斯㈱会長 原次郎氏の熱意により発足した川越親愛学園後援会(現、川越親愛後援会)には、市内の財界はじめ名立たる寺院・病院等々のお歴々がお名前を連ねられていて、その会報第1・2号は今なお圧巻です。
先月25日には、㈱フカワビジネス様の『創業110周年・社長就任記念パーティー』があり、お招きいただきました。フカワ様といえば現社長の先々代、旧商号、深和商事㈱時代の社長 小谷野章次氏が川越市商工会議所会頭をされていたこともあって、郄沢幸治 初代理事長は、後援会の用件で1に原会長、2に小谷野理事というふうに、そして後年は、2代後援会長、長徳寺住職 江田広典氏のもとへと、車の行き先を私に指示しておられたのを、今でも鮮明に記憶しています。
このように、“親愛学園”は市内最初の知的障がい者の入所施設ということで、政財界の全面的なご協力を得て、満を持した体制でスタートさせた初代理事長 の意気込みに、改めて敬意を表したいと思います。
こうして、地域の名士の皆様方に、当初より、あるいは世代を継いで・・・、法人では評議員、運営委員及び第三者委員として、後援会では役員、会員として、幅広くご尽力いただいています。
さて、改正社会福祉法が昨年度、今年度の2か年にわたり施行されました。中でも昨年4月1日施行の制度改革により、すべての社会福祉法人は「地域における公益的な取組を実施する責務」を負うことになりました。親愛会では、平成26年9月より生活困窮者に対する相談支援事業「あんしんネット親愛」を開始し、また、昨年春に発足した地域の福祉施設・医療連絡会「福原地区福祉ネットワーク」(通称、「福原ネット」)を通じて、地域の自治会連合会福原支会・福原地区民生児童委員協議会のご理解ご協力を得ながら、各施設もちまわりの市民講座を開催しています。そして、今般、法人内の全事業所が「川越市ときも見守りネットワーク」に加入し、地域の高齢者、障がい者、子どもの見守り活動を行なうこととしました。
ところで、国は地域包括ケア研究会報告書(平成25年3月)に基づいて、「2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進」することとし、市町村は「地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築」することになりました。
このように、新たな地域の医療・福祉連携を視野に入れたとき、法人設立当初より地域に支えられている親愛会を改めて実感し、地域社会とのつながりをさらに大切にしていきたいと思う次第です。
(理事長 矢部 薫)