❝血沸き肉躍る❞~音楽のある自粛生活~

コロナウィルス感染予防のための自粛生活が、政府から非常事態宣言が出された4月7日以降でも半年以上が経過し、いつ終わるとの予測がつかないまま続いています。

親愛会の各事業をご利用の皆様方には、特に入所型の施設にあっては、旅行をはじめ外出行事の自粛(縮小、取やめ、延期など)や余暇支援のためのボランティア活動の受入休止、そして何よりご家族の面会制限にまでご理解とご協力をいただいているところです。

そうした中、職員は、日々、施設内で工夫を凝らした余暇支援を行い、いわゆる“三密”を避けた外出支援を行うなど、くれぐれも利用者の生活の質が守れるよう努めております。

9月に入って、国内外のコロナウィルス感染第2波の兆しが報道される事態に、嘱託医・協力医より「くれぐれも気を抜くな!」との再指導をいただいて、改めて各事業所の注意喚起を行い、職員の自らの生活でも可能なかぎりの自粛継続のお願いと、新しい生活様式の再確認をしました。

私事ですが、前号に続いて、私の自粛生活を支えているもうひとつを紹介させていただきます。

かねてから「読みかけの本と、まだ聴き飽きていないCDがあれば人生は捨てたもんじゃない」と表明してきたとおり、私の趣味に読書と、そのほかにレコード(のちのCD)音楽があります。(※趣味だけに、以降の文章が少し多弁になりますが、お付き合いください)

40年以上も前のこと、10月早々の午後も3時過ぎ、断続勤務の休憩時間から夕方の勤務へと戻った私に、「すごいステレオを買ったでしょう。“ローンの勤務先確認”でさっき電話があったわよ」と、事務員がいぶかし気に聞いてきました。

就職してまもない私が、住込みが条件だという福祉施設の職員宿舎に、前日に運び入れたそのステレオ装置は、当時、市内で有名なオーディオ専門店で求めたものです。応対にあたった店員は、私のせいいっぱいの予算を聞くと、さっそく「プリメインアンプはちょっと無理してトリオ、スピーカーは手堅くダイヤトーンターンテーブルはもちろんデンオン、こうなるとTMチューナはパイオニアでいい」などと選んでいって、かくして「性能からいって引けを取らない!」という私のコンポーネントステレオ装置は、この時から始動開始となったのです。後年、天井知らずの価格を誇る国内外製アンプの名機から流れるクリアな音質を耳にして、“引けを取らない”とは“それなりに”だと知ることとなるのですが、防音設備もない私の部屋では、この時のコンポで十分というほかありません。

肝心の音楽は、1980年代も後半になると専用プレーヤーが安価になり、それまでのLPレコードに代わって次々とCDレコードが発売されたこともあって、多少のショリショリ音はこらえてでも、手入れが不要なCDに切りかえたものです。

時は1990年3月のこと、かつてテレビ中継でがまんしたビートルズ来日公演(1966年)以来、待望となったPマッカートニーの公演を皮切りに、洋楽のCDを買う中で、その発売に合わせて行われるワールドツアーに臨んで、あるいは東京ドーム、あるいは武道館へと足を運んだのでした。

年に1回のささやかな楽しみが、30年の歳月を重ねると、S&GやE・L&P、Jハリスン、Rスター、Rストーンズ、Dパープル、Eクラプトン、Jベック、KISS、エアロスミス、Bディラン、Jペイジ&Rプラント、CS&N、イエス、K・クリムゾン、そして10月8日にエディを亡くしたVヘイレン、Iマルムスティーン、Bサバス、NIN、RHCペッパーズなど。クラシック音楽では、もっぱら朝比奈隆ゲルギエフを追いかけてきた―のとは違って、私にとって“血沸き肉躍る”ロックにあっては来たとこ勝負。ふり返ればあれもこれも・・・、どう考えてみても一貫性が疑われます。

もちろん読書と音楽で、私はこの自粛の生活をたやすく乗り切れるはずでした。が、読書については個人的な理由で前号のとおり。音楽については、CDで聴く分には影響はありませんが、コンサートともなるとクラスター発生予防から、今なお国内外で制約をよぎなくされているようです。

この期に及んで、私としては、クラシックはかねてより、時にテレビで放映される上述のロックバンドのライブ録画も加えて、ステイホーム、家でのコンサートを楽しむこととした次第です。

(理事長 矢部 薫)