工夫ということ〜前に「進むため」「進める」ために〜

先日のテレビ番組で、大変興味あることが紹介されていました。
それは、東アジア圏で使われている漢字に、それぞれの国によって意味合いが違うというのです。確かに、身近な話の中で「飯店」が日本語の「ホテル」「旅館」であったりするくらいのことは、誰にも知られたことだと思います。
そのテレビ番組で紹介されていたのは、「工夫」という漢字です。
日本語では、「くふう」と読んで、「よい方法や手段をみつけようとして考えをめぐらすこと」です。ところが、中国語では「何かをするのに要した時間、暇」ということになりますし、韓国語では「勉強」ということになるそうです。
日本語でも、言葉そのものの意味合いが時代とともに多少違ってくる、それどころか全く逆の意味で使われている例などが、NHKのラジオ番組で「若者言葉」として紹介されているのを聞いたことがあります。まして、国が違ってくると、それぞれの国の時代の変遷によって、同じ中国を故郷とする漢字でも意味が違ってくることは、言葉の進化として当然のことかもしれません。
番組では、「工夫」の字を例にとって、東アジア圏の国々が共通の文化を持つであろうことに錯覚(期待)するのではなく、今こそ、お互いの国の交流、理解を深めて(差異を認識して)平和の構築、経済の発展等に寄与しなければならないとするものでした。
ところで、法人内各事業について、昨年度に引続き今年度も課題となっていることがあります。例えば、利用者の支援のあり方もそうですし、職員の労働環境もそうです。ご承知のとおり、利用者が年々、目に見えて重度化し、高齢化し、そして病弱化していくと、マンツーマンの支援が多くなって、場合によっては非効率な個別支援が求められることも増えて、結果、職員の右肩上がりの労働過重を来たすことにもなってきます。このようなことから、毎年のように少なからず課題が残されて、また新たな課題を抱え込むといった構造が、ひいては利用者の安全(ご家族の安心)にも影響してきますし、職員のモチベーションを下げてしまうことにもなりかねません。
昨今の福祉では、人・物・金に限りがあります。バブル期のように、足らないから人を充てる、足らないから物を充てる、足らないから金を充てるのではなく、私たちは、今こそ課題解決に向けて、この「工夫」の中に、すなわち良い方法や手段をみつけようとして考えをめぐらせることによって、それぞれの事業が抱えているムリ・ムダ・ムラを整理(排除)しなければならないのだと思います。
(理事長 矢部 薫)