埼玉県地域生活定着支援センター開設に際して

5月10日に、埼玉県地域生活定着支援センター開所式を、法務省、県、市、県社協、県発障協始め関係種別団体等の関係者をお招きし、そして他のサテライト3事業所のスタッフにお集まりいただいて、本事業のセンター機能をも併せ持つ本事業所でささやかに行いました。(※本ブログ「事務局日記」参照)
本事業の開設については、予め新聞社の取材を受け、当日はテレビ局の取材・・・となりましたので、日頃より慣れない私たちには少し緊張した日々でした。
さて、本事業は「司法と福祉の連携による矯正施設出所者等の社会復帰の支援と再犯防止を図ること」を目的に、「高齢であるため、又は障害を有するため、福祉的な支援を必要とする矯正施設出所予定者」を対象に、「保護観察所等と協働して、支援対象者が矯正施設入所中から出所後、直ちに福祉サービス等につなげるための調整」を行うというものです。
昨年7〜8月に、県より県発障協に本事業の紹介があり、9月より長岡会長を始め、特に入所施設の理事を中心に、折から行われた(社福)南高愛隣会の本事業についてのセミナーに参加するなどして研究を深め、さらに年度末に千葉県で開催された研究会で実践的な事例報告を受けた上で、親愛会がサテライト(県独自の「サテライト方式」による)の1つとして事業受託の手を上げさせていただいたものです。
ところで、埼玉県内の唯一の矯正施設として「川越少年刑務所」があります。当刑務所は、親愛会の近く(約500m)にあるものですから、そもそも30年前に、親愛会が入所施設「川越親愛学園(現、川越親愛センター)」を建設するにあたり、地元説明会において、同様の「総論賛成、各論反対の迷惑施設」として、引き合いに出された経緯があります。
私、個人的には、その昔、現刑務所が移転前、川越駅西口前にあった当時は、現在の敷地が刑務所所管の「農場」として管理され、一面のジャガイモやサツマイモ畑で受刑者たちが刑務官の看守下で農作業に就いていたのを目にし・・・、時に、作業中に脱走したとの騒ぎがあったりしたもののほかは、いたって長閑な情景が子供心に思い起こされます。
ともあれ、親愛学園が開設されて10年、15年・・・、そして、今から15年以上も前になるかと思います。地元の「更正婦人会」のある人を通じて「出所真近の受刑者の矯正教育の一環として、施設でボランティア活動をさせてもらえないか」との刑務所からの依頼がありました。当時は、保護者の皆様からの反対も予想されたのですが、「利用者が、直接、受刑者と接することはありませんから」との条件で、月1回、10名程度の受刑者と3名程度の刑務官によるボランティア活動を受け入れてきました。当初から、春から秋までは手の回らない畑の草むしり、冬には雑木林中の落ち葉掃きを主に、現在までやっていただいております。
このことについて、今から5年ほど前に、「矯正教育に協力した」との理由で、当刑務所から感謝状をいただきました。その式典で、私は、折から話題になっていた山本譲司著『獄窓記』に触れ、障害をもつ受刑者の存在を質問したことがありました。その場では明確な回答をいただけませんでしたが、問題となっていることは事実のようでした。ご承知のとおり、今回の事業は、その『獄窓記』が発端となって、国の事業として位置付けられた経緯があります。
本事業により、当刑務所とは15年来の月山奉仕団によるお付き合いに増して、新たなお付き合いが始まることになりますし、今まで縁の少なかった保護観察所・更生保護施設等の法務省関係機関との日々のやりとりも出てきます。
そして、県・市をはじめ、ハローワーク・保健所・市町村社協、そして川越施設連協、川越老施協、県発障協等、各種別協会等々との広範なネットワークの中で、触法障害者・高齢者等の地域生活の定着に対する支援ができるよう、すなわち各機関ごとに「何ができるか」を出し合いながら本事業が1日も早く軌道に乗れるよう、私たち、地域生活定着支援センター事業に関わる者は、相当の困難が予想される本事業に最大限の努力をしていきたいと思います。
(理事長 矢部 薫)