人財育成<経営の神様の心得>

1.はじめに
平成22年度の親愛会のキーワード(※年間の目標を表した一字)は「進」としました。それぞれの業務で職員が一丸となって「(歩を)進める」という意味です。
まず、新規事業としては、相談事業、就業・生活支援事業の相談事業に、新たに県地域生活定着支援事業を開始して、3相談支援事業体制(委託)となりました。
また、ワークスのように、積年の自主製品製造拡大へ思いが食品加工棟「カーロ」の開店へと大きく歩を進めた事業もありました。そして、グループホームケアホームでは新たなホーム2棟を開設することができ、この場合は他の相談事業等からのニーズもあって、計画より少し前倒しでしたが歩を進めることができたことになりました。
他方、センターでは、空き缶つぶしの作業場の整備によって、作業班の充実に、一歩前進したことになったと思います。また、南の里のように、比較的若い利用者対象の<チャレンジ棟>設定により、活動の充実を図ったことも意義ある一歩だと思います。
以上、具体的なところを記述しましたが、一人ひとりの利用者にあっては個別支援計画によって、各自各様の歩みを進めていることと思います。

2.職員の人材育成
昨年暮れに経営テキスト『商売繁盛12の心得』(松下幸之助著、PHP総合研究所編)について、全職員対象に感想文を求めました。結果、常勤・非常勤併せて140名中、114名の職員からレポートの提出を受けました。
社会福祉法人の各事業にあっては、措置の時代とは違って、今ではそれまでの「適切な運営」に加えて経営的な視点に立った運営(=経営)が求められております。例えば、サービスの質の向上・リスクマネジメントをはじめ、財務状況の経営分析等々、近年、障害者自立支援法による利用者との契約の時代に入ると、これまでややもするとタブー視された利益(率)・損益(分岐点)などの用語が日常的に使われ、もはや経営が避けては通れない福祉世界となっております。
そこで、「経営ならば、経営の神様に聞いた方が早い!」とばかりに、職員にお願いした次第でありました。
その感想文の一部を掲載します。

「共感しました」
「ビジネスマンを支援員、お客様とお得意様を利用者とご家族、商売を支援に置き換えて読むことができると思いました」
「この一冊の中に印象深い文章が多くありました」
「商売繁盛と業務を如何にマッチングさせるか・・・?業務の特性からみて、職種によっては無理が・・・、このような声も耳にしましたが・・・。」
「どの職業に関しても、基本となることは同じなのだということを感じました」
「サービス業における“サービス”は物品販売業や製造業におけるそれとは異なる。」
「私達の仕事と商売というものが結びつかないため、最初戸惑いを覚えました」
「私達が日頃思っていることと、かなり近い感覚でした」
「とても強く印象に残りました」
「福祉は、サービス業と言われながらも、利益を直接上げるものではないため、一見、経営の神様と称される松下幸之助氏の『商売』の心得を説いた本書の内容とはかけ離れているように思いがちですが、実際に読んでいく中で、現在自分が担当している業務に生かせる部分が多いと感じました。」
「商売と自分たち福祉の仕事に対する心得として、どれも非常に共感できる内容でした」
「どの業種や世界にも通じる」
「恥ずかしながら、私は筆者松下幸之助さんのことを知らなかった。そのため、松下さんの生い立ちを、本を読む前に調べることに決めた」
「この本に書かれていることは、全て私たちが今取り組んでいる仕事に通じるものがあるとは思いますが、(この部分に)感銘と共感をしました」
「商売(物を売る)という、福祉とは違う分野の内容だが、共通する部分が多くあった。」
「まず最初に、なぜ福祉職を行っているのに商売繁盛の心得ということを知らなくてはならないのかと疑問に思っていました。確かにサービスを提供することと物を提供することは似てはいますが、その2つを同じように捉えていいものなのかと思っていました。」
「生意気のようだが、特に“へーそうなんだ”とか“知らなかった”と思えるところがなかった。ほとんどの項目が読んでみて、“そりゃあそうだよ”とか“自分でもそう思うよ”と言えるところがほとんどだった」
「最初は、商売繁盛と介護がどんな関係があるのかと思いましたが、読んでいるうちに、現在の業務に共通している部分が多いと感じました」
「この本は、経営、商売を進めるうえでの指針が書かれていますが、福祉の仕事にも通じることが沢山あるのに驚きました」
「共感したり新しいものを見つけたりと、大変勉強になりました」
「私の業務では全て大切な事が書いてあると思います」
「特にこの本を読んでみて感想する、感喜するということがなかった。当たり前のことが記されていたのかも知れません。」
「経営者と従業者に必要とされる考え方が、人の心を基本とした観点から成っており、とても理解しやすく、共感できる部分があった」
「仕事での自分を省みながら本書を読み、自己の仕事に対する姿勢を反省しました」
「目先のことではない遠い将来に向けてのかなり厳しい企業としての実践の具体的行動規範が語られています。・・・結局、企業のあり方は人のあり方に通じるものだということです。」
「今の仕事と共通するものがあるように思った」
「優れた経営者は、古今東西言っていることは異句同音です」
「自分の職場での立場や仕事を考えながら、とてもい読みやすくまた再認識することができました」
「この本を読んで、まず最初に私が思ったことは、福祉も、福祉以外の仕事も基本は同じなのだと思いました」
「自分の人生と重ね合わせ読み進んだが、一言ひとことが胸に響き感慨深いものがあった」
「最後に、今、パナソニックグループでは、創業者の意志がどこまで残っているのだろう」

以上、あえてランダムに掲載させていただきましたが、最初は「戸惑いを覚えつつも」、総じて「共感した」「共通する」というコメントでしたので、出題者としても一安心でした。
それから内訳ですが、12の心得の中、上位から
・人をつくる            22名
・当たり前のことを当たり前に行う  21名
・反省を怠らない          19名
・使命感をもつ           16名
・熱意と誠意をもって勤しむ     12名
などを“最も印象に残った心得”だとして、それぞれの業務に対する姿勢・課題等を、各自の立場から論じていて、いずれも大変興味深いものでした。
初めての試みでしたが、視点を変えて、一般企業の経営の側から日頃の社会福祉業務を見る良い機会となったかと思います。これからも職員のモチベーションアップに役立つような人材育成の“ワンステップ研修”が継続できれば幸いです。
(※なお、一部2月初旬になりましたが、私なりのコメントを付けてレポートを返却しました。)
(理事長 矢部 薫)