人材育成〜『グローバルリーダーの要件』に学ぶ〜

時々見ているテレビ番組「プライムニュース」で、8月15日は、テーマ『今、日本に求められるグローバルな人材とは?』で論議を進めていました。
ゲストの1人は、エグゼクティブ・リクルーティング(=いわゆるヘッドハンティング)会社の代表取締役である橘・フクシマ・咲江氏ということで、まず名前からして印象的だったので、しばらく話を聞いていました。彼女は、世界の一流会社を相手にヘッドハンティングを請け負っている世界最大級グローバル会社の日本支社入社後、2000年から本社の代表取締役社長、2009年より同会長に就任し、2008年1月ビジネスウィーク誌により「世界で最も影響力のあるヘッドハンター・トップ50人」に唯一の日本人として選ばれた、というのですから、業界では知る人ぞ知る以上に有名な人のようです。
人材の話はやがて“リーダーの要件”ということになって、提示されたのが『グローバルリーダーの要件』を示すマトリックス図でした。左列に専門的資質として<職務能力><職務経験>、右列に個人的資質として<基本的能力><性格>を配したもので、これは「いろいろな企業から欲しいと言われる人材の要件を整理し考えた場合、だいたいこの枠組みに入る」としたもので、
Ⅰ個人的資質 ①基本的能力 ②性格
Ⅱ専門的資質 ③職務経験 ④職務能力
について、①→②→③→④とサイクルを回してキャリア形成を図っていくというリーダー人材育成プランというような体系図でした。
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番組の中での発言を、聞いた範囲で要約し付け加えますと、
①基本的能力:学校を卒業するまでに、家庭・社会を含み、培われる能力。例えば、頭が良い・理数系に強い・弁が立つなどです。
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②性格:かなり文化的なもの(特性)がある。従来求められていた欧米型の、ダイナミックでカリスマ性、エネルギッシュ、リスクをとる、外に出るタイプ、リーダー性などから、現在では日本を含むアジア的な性格とのハイブリッドな性格が求められてきている。私(橘氏)は“外柔内剛”(私の提言、スローガン)を上げます。例えば、日本人のインテグリティ(真面目で誠実)、ホスピタリティがある、きめが細かい、時間が正確、それら良い点は決して譲る必要はありません(内剛)。そして外に対しては、柔軟に、したたかに対応していく性格のことです。
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③職務経験:とにかく経験を積むことが重要で、経験の中から多様性に対する適応能力・管理能力を培う。特に海外での経験がグローバルな人材として重要で、必要とされている。専門性については、かなり集中して仕事をして、学習能力にもよるが最低5〜6年かかる(7〜8割)。加えて、他の職種経験も(2割程度)市場価値として求められています。
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④職務能力:コミュニケーション能力・危機管理能力・創造的問題解決能力、そして起業家精神、すなわちゼロからものを作る能力です。
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(個人技として内省化)※ステップアップして、次のら線サイクル①の領域に入ります。
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以上のマトリックス図について、親愛会の人材育成を考える時、組織の役割として各職員がどのレベルにいるのか、各自の目標管理と人事考課に大きな客観性(キャリア形成の具体性)を示してくれるものと思います。
ところで、性格について、最終的な目標として“インテグリティ”を挙げていましたのでネット上で調べてみました。
インテグリティ(integrity):誠実であるとともに強固な倫理原則を維持できている状態。清廉潔白(の人)、いかなる権力や圧力にもへつらわず屈しない道義心の堅固さ、この人ならばと人格的に全幅の信頼を集める内面的な強靭さ、したたかさ、行動力と実績(を意味する)。
ゆえに、正直や誠実よりワンランク上の状態をいい、「言うこと」と「行うこと」が一貫し、そこにぶれが無いということで、例えば、「インテグリティがある」と言えば最高の褒め言葉になるし、逆に、「インテグリティを喪失した」と言えば人格の全否定になるという。このことは企業評価としても言える、ということでした。
ちなみに、親愛会の先人たちを考えた場合、『その時、歴史は動いた!』ではありませんが、その時々の難しい局面における決断に際しての“大いなる清廉潔白”に、ことあるごとに感銘させられます。
私たちは、今、近い将来の「障害者権利条約批准」を見据えた障害福祉施策の中にいて、21世紀型の新たな組織の中では、結局は、職員一人ひとりを介して、親愛会の企業倫理として“インテグリティ”が求められることになるのだと実感するところです。
話は戻りますが、橘・フクシマ・咲江氏はリーダーの要件としての必要条件はつまるところ「1つの領域でコアになるところでは誰にも負けないスキルを持ちながら、かつ社長(トップ)になれる人」が“真のプロフェッショナル”、人材のキャリア形成の行き着く先はここにあるというものでした。
そして、「リーダーには、能力として、何より“早い決断力”が求められる。海外でも指摘されるところですが、日本人は、自分の力で切り開いていく、いったん決めたらやるという押しの強さに欠ける。だが、決めるまでに時間がかかるけれど、決めると早いという良さがある。即断即決。タイムリミットまでに、時間を決めて“決める”。そのためには、日常生活のいろいろな場面で、シュミレーションして訓練していくのも必要です」と結んでいました。
(理事長 矢部 薫)