親愛和み俳句会のこと〜5年になります〜

『和み俳句会』は平成19年7月に、当時、親愛会理事長であった長野操先生(主宰)と、職員の吉田一雄さん、韮澤明徳さんと私の4人で結社した会です。
事務局の韮澤さんの記録した当日の『親愛和み俳句会作品集第1号』ではあとがきに、
「21日16時より親愛俳句会の発足記念句会が駅前の居酒屋『秀』で開催されました。・・・(中略)・・・主宰より俳句会の名称を“和み(なごみ)”としてはと提案され、参加者全員が賛同いたしました。俳句を通じて、自然に親しみ心和ませる作品づくりに励みましょう。」
と、期待感あふれる文章がつづられています。
会場は、駅に近いことを理由に、当時、私たちが馴染みとしていた店としました。第7回までの約1年間、開店前の時間を拝借しての句会開催にご協力いただいたマスター夫妻には、今でも「和み俳句会が誕生した会場」として感謝しております。
何より親愛会職員の中から希望者を募っただけの小さな俳句会です。当初の何回かは女性職員から応援(投句)をいただいて、少人数にありがちな、おおよその作風で作者が予め分かってしまう傾向を回避できました。
記念すべき第1回の句会には、
1席に、吉田さんの句
朝顔や ほっと一息 介護の手」
が入り、2席に、吉野敬子さんの投句
「菖蒲の香 兜かざりて 祝い膳」
秀作には、吉村佳子さんの投句
「夏げいこ 客をもてなす 水の音」
さらに、第2回の句会では(投句の部)、金子和子さんの投句
「初ゆかた はにかむ娘の 後髪」
が入っていて、投句の活躍が見事でした。
ちなみに、私の拙句
「子等去りて つくつくほうし つく法師」
は、初めての句会1席、20年来のキャリアを持つ長野主宰も10年来のキャリアを持つ韮澤さんからも採ってもらって素直に嬉しかったのを今でも覚えています。が、幾分かは新米に激励のエール(大サービス)を送ってもらった結果だと思います。と同時に、お二人の秀句を秀句として選べなかった私の力不足が感じられ、今さらながら恥じ入る次第です。
しかしながら、当初のメンバー4人からなかなか会員が増えず、時に1名が欠席しますと3名・・・となって、これでは句会の体をなさず、全く悲惨この上ないこともありました。
翌20年6月に、親愛会評議員の村上まささんにご参加いただいて、これを機に、次の会8回から14回まで、親愛まつりや餅つきなどのボランティアとして、日頃より親愛会でお世話になっている『いけす料理こまい』を会場に行なうことになりました。『作品集第8号』あとがきによれば「当日は4時を過ぎても暑く、クーラーの良く効いたお店の座敷は句会には少々贅沢ですが大変快適な会場でありました。」(韮澤さん記)と、女将さんに格安でお計らいいただいたことに敬意を表した文になっております。
21年4月の句会からは、私の旧友の勝浦敏幸さんが加わって、
「鶺鴒(せきれい)の つつく薺(なずな)や ともにゆれ」
いきなり句会2席のデビューとなりました。
なお、この句会を最後に吉田一雄さんがお仕事の多忙を理由に退会されました。吉田さんには、前年の11月に吟行俳句会を主催、地元嵐山町の名所を案内していただき、本当に良い思い出でした。ご自宅をお借りしての句会1席は、
「坂東の 武者の音聞こゆ 渓紅葉」
長野主宰、即興の一句、かつ格調の高さから一同敬服した次第です。
翌月の15回句会からは、村上(施設長)さんのデイケア施設『ことぶき生活支援センター』の作業室をお借りしての、現行の句会がスタートし、新たに元職員の秋和敏彦さんが加わって、すっかり賑やかになりました。
不思議なことに、句会では時に、「○○さんデイ(一人勝ち)」と呼ばれるような、持参の5句がことごとく高得点句になることがあって、18回の句会はまさに秋和さんデイ!、
「朝霧を 軽く載せたり 秋の川」
は、とりわけ印象的でした。
特に、昨年のこと、22年10月第27回には秋和さんの旧友、宮内一光さんが入って、同月の16〜18日は、「長野主宰の故郷・種子島にて和み俳句会吟行会が行われました。かねてからの夢であった種子島の旅は和み俳句会の吟行会挙行という形で実現しました。当日は天候にも恵まれ・・・(中略)・・・、すべては主宰の導きあればこそ、ありがとうございました。」(韮澤さん記)で表わされているように、その上、定着支援事業の木内英雄さんにも参加していただいて、今でも記憶鮮やかな楽しい吟行旅行ができました。
鹿児島市内に戻って、ホテルの1室で行われた句会では、
1席潮騒の 千座(ちくら)の岩屋 花野風」(村上さん)
2席「誰とはず おじゃれもうすと 秋あかね」(韮澤さん)
3席「地平線 いわし雲分け 朝日さす」(宮内さん)
旅ならではの句が連なっていて、思い出深いものとなっています。
今年23年1月からは、長野主宰の友人である吉敷一枝さんが入って、先日行われた12月の40回句会では、2席
「天を突き 踏んばる木々に 落葉舞う」
は、和み俳句会の、この1年の納めの句としてふさわしい作品でした。
現在では、会員が8名となり、各自が持ち寄った合計40句の中からの選句(5句)に、どれを採ろうか頭をひねり、首を傾けるまでの充実した句会となりました。その都度、長野主宰からご指導をいただいて、全員、少しでも上達できるよう頑張っています。そして、何より、句会終了後の少しお酒を入れた歓談は、お互いの批評も加えて、一層賑やかで楽しいひとときとなります。
来年も、親愛会にご縁のある人たちの集う俳句会として活動していきたいと考えております。
(理事長 矢部 薫)