去年今年に思うこと〜“意味のないことは起こりはしない”のか〜①

俳句の正月の季語に「去年今年(こぞことし)」というのがあります。意味は、去年・今年に思うことですから、上五、あるいは下五に入れさえすれば、日常些事何でも俳句になってしまいそうです。ところが、いざ作ってみると難しいのではあります。
(その1)
私ごとですが、昨年3月11日に東日本大震災が起こって、楽しみにしていたコンサートが延期となってしまいました。
時は過ぎて、8月8日、電車を乗り継いでたどり着いた洗足学園は、真夏の夕暮れ時というには少し早過ぎましたが、それでも建物の影は少し暗くなりかけていて、目的の講堂にはオレンジ色の明かりがともって、上品さを醸し出していました。
『平原彩香コンサート“平原さんちの音楽会”』は、当初3月28日開演の予定でしたが、地震の影響で、この日まで延期されたのでした。
コンサートの内容は、父親のサックス、姉の歌声に乗せたジャズなどの数々・・・、もちろん平原彩香自身も加わって、「ねえねえ、パパ、次の曲は・・・」などと、とにかく家庭的で楽しい音楽会そのものでした。
そして、後半も少し過ぎたところ、聞き覚えのある、少し長めの前奏が流れて、
″Everyday I listen to my heart ひとりじゃない・・・(中略)・・・愛を学ぶために孤独があるなら、意味のないことなど起こりはしない″
ヒット曲『ジュピター』は、あの新潟県中越地震(2004年10月)での被災地、山古志村を中心とした復興のテーマソングとして大きな役割を果たしたことでも、私たちの記憶に新しい曲です。私は、6月に、大震災の爪痕、宮古市の災害現場に行った時の記憶がよみがえってきて、<それでも“意味のないことは起こりはしない、起こりはしなかった”のか?!>と、涙があふれるのを止められませんでした。
コンサートは、折から放映中のNHK朝の連続テレビ番組『ひまわり』の主題歌も加えて、会場が平原家の中に取り込まれたかのようなアットホームな盛り上がりのなかで幕を閉じました。
(理事長 矢部 薫)