ものの考え方〜吉本隆明氏逝去〜

3月16日に、詩人・評論家の吉本隆明氏が87歳で亡くなったと新聞テレビで知りました。
吉本氏と言えば、60年安保反対や全共闘運動のカリスマ的存在で、私の知る1970年前後も「ヨシモトリュウメイが・・・」などと氏の発言や投稿記事をめぐって、開店から閉店まで過ごした喫茶店での議論の中心に流れていたのを、今でも鮮やかに覚えています。私個人としては学生運動にほとんど情緒的に参加して、大方の運動が終って自分に返ってみると、情緒的であった、ちょうどその分だけ(しっぺ返し?)精神的ポテンシャル(可能性としての力)を見失ってしまったかのような空白の時代に突入してしまい、悶々とした日々を送る中・・・、ほどなく吉本氏の『共同幻想論』に出合い、「これで生きれる!」とばかりに、自らの自己再生エネルギーの原点を得たのでした。
氏は、本著作の中で、
人間関係を1、自己幻想:個人と個人の内面との関係、芸術・内面としての宗教など
2、対幻想:個人と他者とのプライベートな関係、家族・友人・恋人など
3、共同幻想:個人と他者との公的な関係、国家・法律・企業・経済・株式・組合など
に分類し、世界を正しく見るうえで効果的だ
としています。
以来、私は“ものの考え方(考える際の方法)”として、日常的に発生する課題を整理、分析して解決するための考える切り口としてきました。
ちなみに、少し乱暴な解釈とも思われますが、近年、このことを応用して、職員教育の資料『親愛会の経営と求められる職員像』中で対人援助技術論の1つとして次のとおりに紹介しています。
コンプライアンス法令遵守
①1人のコンプライアンス
 自律・・・開発の場・手段→SDS
 神。1人芝居、ばらばら。(例)倫理綱領
 だが、良識が過半数を占めれば、組織はまずは安泰。
②2人のコンプライアンス
 他律・・・開発の場・手段→OJT
 愛。成立しにくい。(例)経験・風土
 だが、成立すれば、組織は着実に前進する。
③大勢のコンプライアンス
 衆律・・・開発の場・手段→OFF−JT
 掟。成立しやすい。(例)業務標準表・マニュアル
 だが、一定の共通理解は進むが、組織は空洞化しやすい。
この自律・他律・衆律が円環的に作用されて、組織は螺旋的な発達を遂げる。
先日行われた新任職員研修会では、意識的に、少し丁寧に説明をしたところです。
ここ数年のことでしょうか、吉本氏はコピーライターの糸井重里氏との対談でテレビに登場していたため、時折、懐かしく拝見していたのですが、残念なことです。ご冥福をお祈りします。
(理事長 矢部 薫)