社会福祉法人の在り方等について〜親愛会の今後〜

昨年9月27日に厚労省社会・援護局福祉基盤課所管の第1回社会福祉法人の在り方等に関する検討会が開催され、12月16日には第4回同検討会で議題「社会福祉法人の大規模化・協働化等について」の議論が行われた、とのことです。
今回の当日資料をホームページからプリントしてみると、中にある「法人の規模の差に着目した特徴と留意点」について興味深かったので、少し考えてみたいと思います。
親愛会は、現在、川越市南部を所在地として、2障害者支援施設(入所施設)、障害福祉サービス事業所(多機能型作業所)及び同(グループ・ケアホーム)、同(ホームヘルプ事業等)いずれも川越市指定の障害者総合支援法による事業所を経営しています。また、受託事業の4相談事業には市内を活動の場とする事業もあれば、もう少し拡大した圏域、そして県域を所轄する事業もあります。したがって、必ずしも単一のエリア内で活動しているばかりではないので、「事業区域が1つの市域である」という多くの法人(全体の約7割)から、少し拡大した状況にあります。
他方、職員数は、現在145名で、常勤換算数からいっても「職員数が100人未満(同じく約9割)」(中小企業基本法)には該当しませんので、わずかに大規模法人の仲間に入ることになります。
資料では、大規模法人(複数のエリアで活動する法人、複数の事業を展開する法人など)、小規模法人(単一のエリア内で活動する法人、単一の事業を実施する法人、少人数を対象とした事業のみを行う法人など)と、やや極端な区分となっていますが、注目すべきは、それぞれの特徴と留意点です。
各項目について、逐一、思い当たることも多くありますが、今後の課題として、その中の2点を取り上げてみたいと思います。
課題①小規模法人には、その留意点として「法人本部と事業所に境がなく、法人としての意識が希薄になる傾向」がある
親愛会では、昭和54年5月に川越親愛学園(現、川越親愛センター)を開設してからの約20年間はほとんど“1法人1施設”を行ってきましたので、法人本部にわずかの事業と会計はあっても、その大半は役員兼務の施設長と施設事務員が事務を行い、財務管理も労務管理も施設現場のデスクで行うことをスタイルにしてきました。そのため、日頃、法人を意識せずとも、確かに事業所として対象者は限られ職員の異動もなく家庭的な一体感の中で継続できたのでした。
ところが、平成13年10月に、第二施設として親愛南の里が開設されるや、若干の事業も加えた本格的な人事異動が始まったことを契機に、人材募集の一元化、そして各会計間の連携が必要となり、数年後にはささやかな法人本部を現在の場所に設置することとなりました。形は、各事業の事務経理担当者が机を並べ、集まった情報の中から整合性を図っていく。そして、広報・研修・福利厚生等の委員会の事務局を担っていく中から、必要とされる統括事務を行っていくというものです。
職員については、通所事業等の拡充もあって、少し枠の広がった人事異動の中で、徐々にキャリア形成を図れることとなり、病弱高齢障害者、定着事業利用者という新たな対象者にもどうにか対応できるまでに、着実にレベルアップしてきていると思います。
課題②大規模法人には、「法人本部(統括部門)と施設(事業実施部門)の役割分担が図られ、統括部門の専門化が図られる」特徴がある
現在、法人本部事務局とはいえ、各事業所事務職員の集中化と、引続き2入所施設の長が役員を兼務して本部事業を担っている現状にありますが、このスタイルは、法人の沿革からいって、来たる時代の途上、いわば中規模法人?の位置にあるかと思います。
この課題については、親愛会の今後の在り方として、各事業所との役割分担の明確化、あるいは権限の委譲等を再考する良い機会でもあります。当法人の現在の長所を生かしつつ、多数の事業を展開している大きな法人のような本部の集中化、そして本部職員配置の上での統括部門(人事・労務管理、財務管理、OS環境管理等)の専門性をどう構築していくか、それが大きな課題であるように思います。
さらに、資料は「社会福祉法人の規模拡大に向けた選択肢」として、
課題③具体的な法人規模拡大の方法として、
ア)法人が多角的な経営を行うための法人機能の強化
イ)合併・事業譲渡
ウ)複数法人による協働化
があるのではないか
と具体的なイメージを示しています。
規模拡大については、「社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)」(平成10年6月17日)以降“話は上がるが進まない”ことで知られるほど現実化しない話ですが、今後の社会福祉法人の経営の安定化、とりわけ各事業の専門性の高い人材確保や社会福祉法人本来の使命(社会的付託)実現のための資金調達など、規模拡大によってもたらされるメリットも多いはずです。
私たちは、まずは法人機能の強化を図り、将来的に必要とあれば合併・事業譲渡も視野に入れることはあっても、当面は複数法人による協働化についてできることは何かを考えたいと思います。

さて、親愛会では、計画中の特別養護老人ホームの施設整備が進めば、再来年度より、これまでの障害者福祉から高齢者福祉へと大きく歩を進めることになります。
また、昨年より県経営協を中心に社会福祉事業の種別を超えた「社会貢献活動(生活困窮者に対する相談支援事業)」が検討され、来年度内の発足を目指して委員会で論議を重ねています。この事業には、親愛会が他の2法人と、一昨年来会議を重ねてきた、法人の所属する小中学校区をエリアとした地域貢献活動の一部として、もちろん4相談事業にかかわる緊急対応としても、期待したいところです。(※8月27日記述のブログ参照)
これらにより法人の障害福祉の種別という枠組みが外れて、特養ホーム開設により高齢者福祉も含むことになりますし、社会貢献活動では異種間の協働の第一歩を踏み出した社会福祉法人として、つまり、「法人の経営規模の拡大によって、社会福祉法人の自律性を高め、社会福祉事業の拡大や公益事業、収益事業なども含めた多角的な事業の積極的展開」(上述、同(中間まとめ)文より)が可能な法人へと、親愛会が大きく飛躍することになります。そのためには、上述の課題①の認識に立って、親愛会の風土の中で課題②をどう構築していくかが求められているのだと思います。
(理事長 矢部 薫)