平成26年度一文字漢字『備』〜そなえるということ〜

去る4月4日に行われた、例年より少し規模を小さくした新任職員歓迎会の挨拶の中、恒例の、今年度の一文字漢字『備(び)』を発表しました。
“備”とは、漢字の成り立ち・由来を調べると、人が矢を入れた箙(えびら)を肩や腰に掛ける形声文字で、狩り(戦)に備えることから、広く「そなえる」を意味するようになったそうで、
①あらかじめそなえる。そなえ。備荒・備蓄・備品/準備・整備・設備
②必要なものがそろう。そなわる。完備・具備・兼備・不備
とあります。
1つ目の「備」
“備荒(びこう)”といえば、前もって凶作や災害に備えておくの意味で、その昔、二宮尊徳が備荒作物として長期貯蔵の耐える穀類の作付けを推奨していたことでも知られるところです。が、冷凍冷蔵技術が進んだ現在では、ほとんど死語に近かったはずでした。
話は遡って、2011.4.5の本ブログ「『北国の春』はいつ?」で紹介したように、かつてあれほどまでに美しかった岩手・宮城県リアス式海岸の大きな港はもちろん、村々の小さな漁港の入口に至るまで、必ず、高さ10メートルもの巨大なコンクリート塀があって、行く先々で「ここらは、チリ地震の大きな津波によって大災害が起きた。これは津波の防潮堤、これで私等はもう大丈夫だ」と説明を受けたものでした。この歩き旅の最後(帰途)に、実は福島県双葉町の友人を訪ねて、真新しい福島原発の内部を見学させてもらったことがありました。もちろん、当初から最新科学技術の粋(エリート)を集めて、2重に3重に安全対策が施されているはずだったのでした。
しかしながら、2011.3.11の東日本大震災では、巨大津波は、その堤をも易々乗り越えて、一帯の町や村を人々もろとも、そして安全神話さえ飲み込んでしまった。私たち人間の精いっぱいの備荒もまた、天変地異に類する自然の計り知れない猛威の中では、ささやかな“想定内”の抵抗でしかなかったのかと、教訓されたことでした。
親愛会では、昨年度中に東日本大震災から学んだ「防災計画(災害対応マニュアル)」を検討し、市防災危機管理課の立ち会いで、法人合同総合防災訓練を実施しました。これまでの「机の下に隠れましょう」程度から一転、利用者が刻々と中台グランドに集結する姿は、まさに生々しい避難の体験でした。しかしながら、利用者の安否確認はもちろん、耐震診断を待っての福祉避難所の指定、障がい者の避難場所の設定、職員の招集、地域・ボランティアの応援体制、災害備蓄品の範囲など課題が残されて、今年度に繰り越されました。
その点で、まず新年度の「備」は、新型インフルエンザのパンデミック対策も含めた災害への備えにあると思います。
2つ目の「備」もう一つの「備」は、法人の一大事業である特別養護老人ホーム「みどりのまち親愛」の施設を“整備”することです。本事業については、昨年2月1日に川越市より整備事業者選定の内示文書をいただいて、4月より本格的に始動させたものの、諸手続きの遅れによって11月までにやっと用地取得を終えるにとどまりました。その遅れを挽回すべく努力しましたが、現在も続いているという前代未聞の建設業界の混乱(資材高騰・職人不足)のあおりを受けて、工事業者選定の入札不調・・・、随意契約とするも、そのため時間を要した結果、大幅な工期の遅延を招いたことでした。3月中にどうにか起工式を終えて、予定では5月着工、来年6月完成ということになりました。
特養ホーム開設のための“準備”として大事なのが、スタッフの人材確保です。今年度の職員採用は、各事業所の人数枠を拡大して採用し1日付けで配置したばかりですが、昨今の福祉人材難に対応した早めの次年度募集を開始したところです。
他方、実質的な準備の場として、特養ホーム開設準備会議が始まります。その中では、スタッフ予定職員を中心に、ユニットケア勉強会を皮切りに、マニュアル・日課の作成等、介護のソフト面の整備、及び既存特養ホームでの現場実習を通した職員育成を図っていく予定です。
その他、建物設備・備品の整備を含めると、“完備”目指して何から何まで「そなえる」1年になりそうです。
(理事長 矢部 薫)