懐古ラン〜わが青春の金沢を走る!〜

決して本格的なランニングランナーなどではなくて、あくまでも制限時間内にどうにか完走できるという、私のような健康志向のジョギングランナーにとっても、今や全国各地で行われている大会に年に何回かはエントリーして、日ごろの成果を確かめ、かつ継続のモチベーションは高めたいものです。
他方、旅行バックにシューズを忍ばせておいて、多少の二日酔いも気にせず、早朝の城下町や温泉街、そして美しい海岸線を一人でひた走るのも、おまけのような楽しみとなります。
今月9日に行われた金沢城下町マラソンは、毎年行われているというハーフマラソンに加えて、来春の北陸新幹線の開業に合わせて行われる予定の第1回金沢マラソン(フルマラソン)の、そのプレ大会として企画されたものでした。
私個人としては、来たる小江戸川越ハーフマラソンの前哨戦(足慣らし)として、短めに走っておくのもよいとばかりにエントリーしました。
しかしながら、金沢といえば、私の若き日の第二の故郷・・・、10kmのコースながら、思い出の日常生活圏域(=観光地)を一周する魅力的なコースです。
号砲一発、広坂通りガラス張りの円形美術館として有名な金沢21世紀美術館向かいの、折からアメリカ楓(アメリカふう)の並木の紅葉鮮やかな、しいの木迎賓館(元県庁)前をスタートです。走り始めてまもなく、兼六園から石川門をつなぐ橋下に達したときは、走っているという実感の中で、不覚にも、早くも懐かしさで胸がいっぱいになりました。裁判所の近代的な外観に驚き、近江町市場の風情をかいま見て、やがて片町交差点を左に折れて、来たる石引町への高低差60m距離600mに及ぶだらだら坂はひたすらきつくて我慢の限界・・・。石引通りに出てからは下りの残り3km・・・、兼六園脇から門下のゴールまでラストスパート、タイムは1時間弱の道のりでした。
金沢が懐かしいといっても、もともと就職先も限られている地方都市なので、学生時代の友人たちも卒業と同時にこの地を離れ、東京・大阪・名古屋へと足を進めて、それぞれの人生で活躍しています。また、私の寄る年波もあって、恩人・知人に至っては亡くなられたとの便りも徐々に増えています。ゆえに、気軽に訪問できる人はほとんどいなくなりました。
中でも、ヴァイオリン製作家であった今村さんには、下駄を鳴らせて友人と二人で度々工房を訪ねては、新作の音色を聞かせていただきました。そして、時に私たちが持参したものも含め、レコードを聴き酒をいただきながら、主にフランス古謡やバッハ・モーツァルトベートーヴェンの音楽論に花を咲かせた思い出がありました。
その今村さん宅には、研修等の旅先であっても金沢に入ったからには時間をやりくりしてお伺いしてきました。が、数年前に訃報を聞いたまま不義理をしておりましたので、マラソン終了後に、早速お墓参りをさせていただきました。
金沢は、私がいた当時とはすっかり変わって、城跡の復元工事も進んで、かつて大学があったことさえ忘れさせてくれます。また、武家屋敷の土塀が美しい長町に観光客用の土産物店や甘味処も増えて、最大の繁華街である香林坊に出ればファッションセンスあふれる街並みに圧倒されます。
さて、来年の本格的なマラソン大会は11月15日と決まっていて、エントリー受付は3月開始・・・、スタートは今回と同じながら県陸上競技場をゴールの42kmです。私は自称“金沢の観光大使”として、大会の大盛況を応援したいと思います。
(理事長 矢部 薫)