褒め言葉〜人生のきっかけ〜

「君の喉の奥には小鳥が住んでいる」
これは、先日行われた『アート・ガーファンクル来日公演』中に披露された、これまでの自身の人生を振り返った詩の朗読(通訳)の一部です。
Aガーファンクルといえば、映画『卒業』(1967年公開)の全編を通じて流れる曲目で知られるサイモン&ガーファンクルの1人です。
公演そのものは、「Aガーファンクルとの魅惑の宵」と副題のついた、アコースティックギター奏者1人の演奏で、数曲は子息とのデュエットというアットホームなコンサートでした。
上記の一節は、10歳の時、NYセントラルパークで歌っていると、周囲の大人たちにその歌声を褒められた。まさにそのときの言葉だそうです。これをきっかけに教会の合唱隊に参加し、のちにPサイモンと出会い、まさに≪天使の歌声≫と全世界で絶賛される歌の人生を送れたことへの感謝が朗読されていました。
今回は、4年前に声帯麻痺を発症し、奇跡的に声を取り戻したこともあって、感慨もひとしお・・・、年齢も73歳になって、さすがに全盛期のような美声とまではいかなくて、また一部の高音域フレーズが出にくくなってはいましたが、それでもなお透明感のある歌声に会場は包まれて、名曲“サウンドオブサイレンス”“スカボローフェア”“明日にかける橋”などに拍手鳴り止まず・・・、でした。
話は変わりますが、これより先に、私は、浅野善起著『喜びの発見〜よい会社とは〜』を読み終えたばかりでした。
そのまえがきに、よい会社は、たとえ人材・技術・設備・資金などが欠点だらけであろうとも、「欠点に目くじらを立てないですべてをありのままに受け入れ、ただひたすら長所に光を当てて辛抱づよく歩きつづけている。損得をも忘れて大きな努力をしている」と記しているように、本書を通じてポジティブな会社経営を提唱しています。
そして、文中に恩師、平澤興京都大学元総長の言葉「人の人たるゆえんはいかに考えるかというはたらきにあり、百四十億の脳神経細胞をいかに使うかということにかかっているが、眠っている脳神経細胞が目覚めるのは情熱に火がついたときである。目の前が急に明るくなり、からだが熱くなるような思いをしたときである。そして情熱に火をつける方法はただ一つ、長所に光を当ててそれを伸ばすことである」を引用しています。
親愛会では、この十数年前より、目標管理・人事考課制度、およびOJT等の研修制度を導入し、資格取得を推奨して、職員の人材育成に取り組んでいます。
さすがに、叱咤激励のあまり職員の欠点をあげつらうような上司・同僚は今やいませんが、チームワークで行う仕事ゆえの特性から、ややもすると職員の短所に目が行きがちです。が、そこは“何を、どれだけがんばったか”の加点主義でいって、くれぐれも減点主義にならないように気をつけたいところです。
他方、年末に職員一人ひとりの希望を聞いて、翌春に行う人事異動でなるべく職場、職域で望みがかなうように(最大限配慮できるように)、<意向調査(記名)>を行っています。
親愛会では、入所施設、通所施設、GH、ホームヘルプ、相談事業等、多種の職場、職域がありますので、自らのキャリアに基づいて、あるいはモチベーションのあり様によって、毎年春になれば辞令の発するところ、職場にとどまるも、異動するも、本人の実力を信じて働いてもらいたいのです。
しかしながら、毎年のように多くの優れた人材を得るも、残念ながら、諸般の事情もあって、わずかながらも退職して進路変更に踏み切る職員もいます。
私たちは、せっかくのご縁で、人生上の大きなウエイトを占める仕事を介して出会ったのですから、もっともっと長所に光を当てて伸ばしてあげたい。もう一度、親愛会の目指すところ、福祉への情熱に火をつけてあげたい。そのためには、あらゆる機会を通じて、目の前が急に明るくなり、からだが熱くなるような思いをさせてあげたい。たとえば、かつてAガーファンクル少年が褒められたような、情熱に火がつくような、極上の褒め言葉を用意できれば・・・、と思うのです。
(理事長 矢部 薫)