仕事の魅力〜モチベーションアップ本来の要因〜

今年の親愛会職員の人材確保では、この2〜3年前から徐々に困難な状況が始まったとはいえ、幸い多数の職員を募集・採用できた次第です。「オープン時は大丈夫だよ」との関係周囲の助言どおり、年度途中の特養ホーム開設にもかかわらず、各職種とも当初の予定職員数は確保できました。
しかしながら、<オープンニングスタッフ募集>の大見出しが使えなくなった今となっては、時期的に難しいこともあるのでしょうか。ハローワーク登録、新聞の折り込みチラシ、人材採用活動等々、東奔西走の毎日・・・。ホーム満床までに要する若干の人材確保に苦労している現状です。
テレビ報道などでご承知のとおり、日本は人手不足の時代へと突入し、国内の各種業界はどこも人材確保に躍起となっています。国を挙げて抜本的な雇用対策が望まれるところです。
親愛会では、年末恒例の、来年度の職員配置及び新任職員採用枠の参考とするため『職員意向調査(異動・退職希望等)』を開始しました。これは新任職員の追加採用もさることながら、現職員の就業継続にいっそう取り組まなければならないことでもあります。
当法人では、10年くらい前から、たとえば、正規・パートタイマー職員への切り替えを可能にした「職種間転換制度」、他分野での経験(学習)等によりもう一度自らの人生を見直す「ギャップイヤー制度」(1年間以内の休職)、一定期間勤務した職員の息抜きのための「リフレッシュ休暇」(有給休暇)、扶養子女(小中学生)の各種用件等に充てられる「ファミリーフレンドリー休暇」(有給休暇)、趣味同好会への「クラブ活動補助金(福利厚生)、そして年俸制給与制度」などを導入して、少しでも職員の就業継続(モチベーションアップ)につながるよう待遇改善に努力してきました。
ところで、最近でこそ、社会福祉法人をターゲットに、内部留保(剰余金)を皮切りに、一部の法人の不祥事等を書き連ねて、福祉関係者にやや評判の悪いA紙ですが、40年近く前に、私が社会福祉事業に入職したての頃は、他紙に先駆けて社会福祉関連の記事を多く掲載している新聞として定評がありました。私は、その頃からの習慣で、今でもその切抜き帳を続けています。最近では、新聞自体を購読していない職員が増えていますので、さらにその切抜きをコピーして関係職員に配布しています。
確かに、新聞各紙の見方、考え方の傾向(偏り)もありますので、一概に新聞を鵜呑みにする必要はないと思います。が、新聞は今なお万民の読み物としての側面があって、好むと好まざるにかかわらず、やがて記事(論調)が世論を作っていくこともあります。私は、「このようなことが記事にある。これをどう考えるかだ」との思いがあって、その時々の記事のコピーを、ある時は支援にあたる職員一人ひとりに渡し、ある時は介護ユニットに配り、ある時は各部署に配達し、ある時は全事業所にファックスで送り、ある時は経営会議で取り上げてきました。
先月末の11月30日のこと、いつものように朝刊を開いてみると、オピニオン欄(読者欄)に『ダウン症の娘は「人生の師」』『障害児が自立できるようにして』、トピックスに『障害者・健常者 心一つ〜東京で初の「パラ駅伝」〜』の記事が目に留まりました。翌日には『ダウン症の僕 不幸じゃない「障害児減らせれば」発言に怒り』の本記事がありましたので、早速、これらのコピーを次の経営会議でメンバーに配布し、
「かつて福祉の仕事は奉仕の精神(?)が求められて圧倒的に給料が低かった。にもかかわらず、私の経験では、大方の職員は、その頃大なり小なり活発であった待遇改善の労使交渉を尻目に、A紙に度々掲載された障がい児者の新聞記事の内容を材料に、福祉の将来、そして権利擁護について議論を沸騰させた。このことは若き日の私たちが、ともすれば見失いがちな福祉への自らの動機づけを補強していたように思う。
今の時代、ともすると虐待などの不祥事に関する新聞記事ばかりに目が行ってしまうのは、私だけではないはず・・・。結果、これを他山の石とばかり、職員にリスク管理ばかりを、注意してきたように思う。これも、もちろん大事だが、ハースバーグの『動機づけ・衛生理論』によれば、会社の方針と管理、監督は“衛生要因”でしかない。これらの記事を教訓に十分に手を打ってリスクマネジメントの行き届いた安心な職場を整備(育成)しても、労働条件・給与等の待遇改善も含め、職員の不満がなくなるだけであって、それ以上の仕事に対する意欲増進には結びつかないという。
私は、(配布したコピーを手に)これからは、このような記事にもっと目を向けて、自分たちが通ってきたように、真正面から福祉を、仕事そのものを議論する場(研修等)を多くしたい。そして、職員の本来の“動機づけ要因”の促進、モチベーションのアップにつなげたい」
と、話した次第です。
(理事長 矢部 薫)