謹賀新年〜社福法改正を前に思うこと〜

「心で見たときだけ本当のことが分かる
大切なものは目に見えない」
これはサン・テグジュペリ作の童話『星の王子さま』中の、最初は(王子:ねー、ぼくと遊んで?)「君と遊べない、なついてないから」(どういう意味?)「絆ができていないってこと、俺にとって君は10万人いる他の男の子とどこも変わらない」と素気なかったキツネが、やがて親しくなった王子との別れ際にそっと教えた“秘密”です。
暮れの12月、NHKテレビで放映された『SONGSスペシャ松任谷由実』は、この童話を題材に今でも継続的に行われているフランスの小学校の授業風景を取り上げていました。ユーミンの「それぞれの暮らしの中で“目に見えないけれど大切なもの”って何ですか?」との質問に、教師が生徒一人ひとりに問いかけていくシーンでは、最初の子供が「友情」と答え、次の子供が「愛情」と答えていました。そして、次の子供はというと、なんと「怒り」と答えたのです。さすがに驚きを隠せないといったふうで、ユーミンは「怒りはどんなふうに大切?」と彼に質問すると、「ええっと、怒ると大切な人を見失うからあんまり怒らない方が良い」と続けたのでした。
番組は、次に、41年前に1通の高校生からの手紙で校歌を作曲したご縁で、再び長崎県五島列島奈留島(なるしま)を訪れたユーミンが、奈留高校50周年記念式典での島の人たちとの再会・・・、出会いから時を経て“目に見えない”絆へと心を育てていった感動的な場面へと移っていきました。ちなみに、その歌とは、荒井由実時代の名曲『瞳を閉じて』で、作曲の経緯はともかく、ご存知の方も多いかと思います。
ところで、昨年は戦後70年、そして安保法案(安全保障関連法案)が衆議院参議院本会議で可決成立したこともあって、改めて戦争について考えさせられたことでした。私たちは、最初は個人的な不平不満であっても、これが昂じると怒りとなって爆発し、やがて人々の激昂のうねりとなって国家・民族間の戦争へと発展してゆく可能性を考えたとき、平和を支える私たち一人ひとりの責任を痛感しなければならないところです。そして、憲法を都合の良いように解釈してしまうことへの怒りが、月日の経過の中で諦めとならないように心したいと強く願うのは私ばかりではないと思います。
その辺のところを上述の小学生は言い得ているのでしょうか。ユーミンは「深い答えが返ってきて感心しています」と述べていました。私は、その子と接する家族をはじめ周囲の大人たちの考え方の深さ、たとえば定番の図式<“大切なもの”イコール友情・愛情>の反対の意味をも斥けないで、意味の一つとして持たせおく文化を強く思いました。少し大げさに言えば、その文化とは、革命で自由と平等・博愛を勝ち取った国が、やがて第二次世界大戦では隣国の侵攻を許してしまったという中で培ってきた強靭な精神とでも言えるでしょうか。
親愛会では、職員の定着対策のための基礎資料とすることを目的に、今般、『職員満足度調査(アンケート)』を行いました。各項目については、担当者による細かい分析を待たないとその詳細は分かりませんが、予想どおり<満足>が多く見られる項目もありますし、意外なところで<不満>の比率の高い項目もあります。また、その他の要望・意見の自由記述欄では、具体的な要望や、不平・不満が読み取れる意見もあります。各項目には考察を付けて、その他についてはQ&Aのような形で職員に公開(回答)し、来年度の法人経営と施設運営の改善に役立てたいと思います。
ところで、新年早々に開催予定の通常国会では、私たちにとっては抜本的な社会福祉法人改革となる『社会福祉法改正(案)』が成立見込みです。親愛会では、これを機に、来たる大変革を乗り越えられるよう、これまで以上に多様な人材の活躍できる法人を目指したいと考えています。
(理事長 矢部 薫)