これからの“働き方”〜副業をめぐって〜

5月25日、NHK朝のニュース(トッピクス)は『“副業”が変える?企業と働き方』でした。
まず初めは、Sさん、大手企業の営業の仕事を終えた夜は、組織の運営や戦略をアドバイスするコンサルタントに変身する男性の映像紹介で、彼は「本業外で取り組んでいくことで、自分のスキルに気付く。ものを考える視野とか視座、視点が変わってきた」とコメントしていました。
続いて、アナウンサーより「2年前の国の調査によると、副業を認める企業は3.8%。法的には、副業をすることは自由ですが、本業がおろそかになるなどの懸念から、社内の規則で禁じている企業がほとんどというのが実情だ」との説明がありました。
親愛会でも、就業規則で<許可なく他の事業所等の業務に従事しないこと>と、特別の場合以外は原則として副業を認めていません。
ところが、「今、この副業に対して、企業や働く人の考え方に変化が起き始めている」というのです。
次に、≪広がる“副業”働き方が変わる?≫(リポート)では、今年4月より社員の副業を認める新たな制度を導入した大手製薬会社の会長が「今まで、社員が副業するのはけしからんということで禁止になっていたが、第2の仕事を持ってください」と訓示した結果、1か月で60人以上がすでに会社の許可を得て制度を利用している事例を紹介していました。「背景には、事業の多角化を一段と進めたい。そのためには新規事業に挑戦するために、社員に人脈や視野を広げてもらおう」との狙いがあるとのことです。
同社Yマネージャーは「自分たちの(仕事の)やり方を変えていかないといけない。社内だけにとどまっていたら、そういうことにも気付かない。社外に出て行くと、視点を変えようとか、そういうことにつながるんじゃないか」と評価しています。
他方、働く側の副業に対する意識の変化にも注目し、副業を希望する人が登録するサイト(登録者1万5千人超)を紹介していました。
このサイトをきっかけに副業を始めたAさんは「いろいろやって、スキルアップができる。できることがどんどん広がっていく。1社に閉じこもっているより、いろいろな会社、いろいろな人、社外の人とのネットワークをいかに作って、いかにいい情報を仕入れて、それを仕事に生かすかが重要」とのこと。また、2つの副業を持つというBさんは「大変と言えば大変。でも、気持ちいい。違う仕事をしていると気分転換にもなる。・・・それぞれの会社から得たものをひとつに集約して、新しいことを、どんどん作っていける。やりがいは、最高にいい」とのことでした。
次に、番組は≪広がる“副業”課題と可能性≫と題し、Y取材記者は、企業と働く側の評価の高まりとは別に、①労務管理、②企業秘密漏えいなどが課題になると指摘し、「うまく活用すれば、企業にとっても、働く側にとってもメリットが期待できそう」だとしていました。
番組の終わりで、同記者は「特に働く側の意識の変化が大きい。従来の終身雇用という企業と働く側の関係が揺らいできている。自分のスキルを本当に必要としている場所で使いたいとか、もっと自分の能力を向上させたいという価値観が、かねてより強まっている。・・・今、実は政府内でも、人手不足の解消という点で、『副業・兼業』というものを促そうという議論も出てきている。社会の多様化が求められる中で、こうした新しい働き方を、今、議論するタイミングにきているのかもしれません」と結んでいました。

ちなみに、自由民主党財政再建特命委員会2020年以降の経済財政構想小委員会”の「2020年以降の『第二創業期』に向けた議論の経過」報告(本年4月13日)によれば、「戦後の終身雇用される会社人として一直線のレール型とでも称すべき生き方を見直して、これからは多様な働き方をする社会人として網状のネット型の人生を送ることになる。つまり、2020年以降の人生100年時代の働き方は、「20年学び、40年働き、その後休む」という戦後一貫して継続してきた終身雇用モデルではなく、長期雇用は維持しつつも、一つの組織や職場に所属し続けることだけが選択肢ではなく、自らの関心に応じて、いつでも学び直しができるようになる。兼業や副業が当たり前になる」としています。

また、5月中に朝日新聞連載の『教えて!「働き方」改革⑦仕事の能力、会社で身につける?』では、厚生労働省“「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会”に参加する大内伸哉神戸大学教授の発言「技術の進歩で企業内でのスキル形成や教育が難しくなっている。従属的な働き方ではなく、自営業者が一般的な社会になるかも知れない。大事なことは『仕事のプロ』になることだ」を紹介しています。そして、記事は「仕掛けたのは政府!・・・、政府は同じ企業にできるだけ長く勤める「雇用維持型」から、「労働移動支援型」への転換へ動き始めている」と報じています。

さて、現在、親愛会の来年度の職員募集・採用にあって、例年にない厳しさを実感しています。私たちは、上述のような新たな雇用形態をはじめ、多くの課題の解決を視野に入れながら、人材の確保、とりわけせっかく採用した人材をみすみす流失させることのないよう、自らの事業所の働き方を最大限工夫しなければならない―そんな時代に突入した感があります。
(理事長 矢部 薫)