リーダーの条件〜定時評議員会を終えて〜

第一の条件 孤独に耐えられること
第二の条件 時代の理念がその人に乗り移っていること
第三の条件 冷徹な理性を持たなければならないこと
第四の条件 修羅場に強いということ
第五の条件 怨霊を作らない、あるいは怨霊の鎮魂が巧みであるということ
第六の条件 いち早く組織の危険を予知し、それに備える嗅覚をもたねばならないこと
第七の条件 私にこだわるなということ
これは、私が学生時代から尊敬してやまない優れた日本の哲学者、梅原猛氏の著作『自然と人生(おもうままに)』(平成7年刊)中の「リーダーの七つの条件」です。
私は、この章を、初めて管理職に就任した春に、再度、読み返して自らに課したのを覚えています。
後年、特に理事長に選任(兼任)されて以降は、多くのビジネス書の類いをあさるも、毎回のように、梅原氏の歴史に裏打ちされた、このシンプルなリーダー論に立ち返ることが半ば習慣となっています。
この条件のうち、ユニークなのは第五の条件で、ここに怨霊、すなわち梅原哲学の神髄というべき怨念の問題を取り上げています。つまり、「味方の組織から怨念を出さないためには人事を公平に行わなければならない」とし、さらに「リーダーは決して些細なことで有能な人間を排除してはいけない。たまたま一つのことで自分と意見が同じでなかったとしても、その人間が永久に自分に対して敵であるということにはならない。状況が変われば、かえってそのような人間が自分の味方になることもあるのである」として戒めています。
私たちの福祉の職場は、個性あるおおぜいのスタッフのチームワークでなりたっています。人材は“人財”です。労務管理上で行き届いた配慮はもちろんのこと、リーダーは、また、人材育成・人材定着の上で、多様な価値をも取り込んでいける器量の大きさも求められるところだと思います。
もう一つ取り上げたいのは第七の条件で、「人間が働くのは一つには自分のためである」としならも、他方「人間の労働には既に(家族のためなどの)利他行を含んでいるが、リーダーはふつうの人以上に(すなわち組織、そして社会に及ぶ)利他行をすることを余儀なくされているのである。彼は組織のリーダーとして組織の安全を図り、その利益を増進するという義務を負わされている。それゆえ、彼はその役職によって利他行の人でなければならないように定められている。そこで(それ相応の自利を得るとしても)、もっぱら自分の利益を追求し、自分の家族の利益を追求することは許されない」と戒めています。
そして、「リーダーには引き際がもっとも大切である。必ずしも自分の腹心ではなく、いちばんよく組織を統率し発展に導く人間を後継者に決めて、自分は潔く身を引くということがどんなに組織の発展のために必要なことであろうか」、さらに「私は、リーダーが組織を去るときは少し早めのほうがよいと思う。惜しまれて去り、後のことには口を出さないが、陰ながら組織の発展を見守り、組織に来たならばそれなりの助言をし、目立たないが組織のためを図る。それは、・・・(略)・・・やはり東洋人にはもっとも理想的なリーダーであるように思われる」と、結んでいます。
さて、私事、この度の社会福祉法の改正に臨んで、最終的に落ち着いたのが嘱託職員の身分です。また、これを機に県域の団体の役員と、それに関連する充て職を退き、たいぶ身軽にしました。とはいえ4月、5月、そして6月は、折から法改正による自法人の事務仕事も多くて、嘱託といっても、例年以上に多忙だったように思います。
そして、6月17日に開催された定時評議員会及び理事会で、私が引続き理事長兼総合施設長に選定されました。
就任にあたり、まず、法人の中長期的な経営の安定化を課題に、業務執行理事体制のもとでの各事業組織の<ガバナンスの強化(徹底)>を図っていきたいと思います。次に、改正社会福祉法上の、特に4年後に予定されている<会計監査人の導入>への準備、及び昨年春に立ち上げた「福原地区福祉ネットワーク」(地域連携)による地域福祉活動<地域における公益的な取組>の実施などを、目下の課題としたところです。
(理事長 矢部 薫)