副業と複業〜働き方改革の中で〜

今年の1月に、厚生労働省より「柔軟な働き方に関する検討会」における議論を踏まえた『副業・兼業の促進に関するガイドライン』が公表されました。
親愛会の職員等就業規則は、元より同省の「モデル就業規則」を準用し、職員の服務規律の遵守事項の1つとして「許可なく他の事業所等の業務に従事しないこと」(現行)としています。
今般の改正について、親愛会では「(就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければならないことから)副業・兼業の導入の際には、労使間で十分検討する」(ガイドライン)時間がもてず、本条項については今春の就業規則改正に加えることができませんでした。
しかしながら、事業所の規則改正の成否にかかわらず、4月以降は、すでに「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由である」(裁判例)ことから、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」(改正後)よう、「就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心がけて」(ガイドライン)いかなければならないとあります。
私たち親愛会では、今国会で論議されている<多様な働き方改革>の動向を見、場合によっては新たな改正点を加えながら、来春の親愛会就業規則改正に向け、今後、法人内で十分に検討することとしました。
その働き方改革論議の中で、上述の副業に関するあるテレビ番組中で、あわせて紹介されていたのが<パラレルキャリア>です。ネット上の転職サイト等では、<複業>として多く紹介されていましたので、少し引用させていただきながら、私なりの考えを述べたいと思います。
まず、初めてパラレルキャリアを提唱したPドラッカーは、「本業を持ちながら、第二に活動をすること」(『明日を支配するもの』)と定義し、背景として「歴史上初めて、組織より人間の寿命が長命になったため、第二の人生をどうするか考える必要が出てきた」としています。
このことから分かるように、本来、企業寿命の短命化(50年→25年)に備える意味で使われてきたことが、現在では、働く側の人生90年、100年時代の積極的な生き方の一つとして、定年退職後の第二の人生のみならず、現業にあっても仕事以外の仕事を持つことや非営利活動に参加することによって「複数の経歴を並行して磨く」という意味合いをもつようになったというのです。
そして、<副業>が副収入をもたらす側面をあわせもって論議するのと違って、<複業>は必ずしも収入を目的としない。自身のスキルアップや視野の拡大、将来に向けた自己投資として余暇時間を有効活用することを第一に考える、ワークスタイルの一つだというのです。
ところで、Mグラッドウェルの言う『成功する人々の法則』「1万時間の法則」(ある才能が開花するまでには、おおよそ1万時間の訓練が必要だという目安)によれば、1日3時間訓練を積んで10年間で1万時間費やして、どうにかプロフェッショナルだということになります。
たとえば、本業として1日8時間働いて・・・、年間2000時間、5年間で計1万時間。5年も過ぎた頃には、私たちは仕事(なりわい)として“成功する法則”以上の訓練を積んできたことになります。もしも努力と運に恵まれず一流とまではいかなくても、一定のエキスパートとしての評価はいただけるはずです。
他方、複業として必ずしも収入を目的としないモノづくり・ボランティアなどの活動を、たとえば週2日の休日のうちの4時間を費やしたとしたら、年間200時間・・・。1万時間になるには50年もかかることになります。エキスパートの道のりはほど遠いと言わざるをえません。が、私たちは、こうした活動によって、たとえ週1回だろうと5年も続ければ(続けば)、本業とは違った世界で得るものも多いと知っています。それはそれで人生を豊かにしてくれるものと思います。
つまりは、本業と、本業とは別のキャリアを積んだことで、少なからず複数の経歴の中で「多くを生きた」ということになる!のではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
(理事長 矢部 薫)