“職務と試練”~新型コロナウィルス感染拡大~

昨年11月末に、中国湖北省武漢市で新型コロナウィルスの最初の感染症例が確認され、またたく間に世界的感染拡大が報道されました。日本では、2月19日に横浜港に入港した豪華客船ダイヤモンドプリンセス号により、その感染力が明らかとなって、いまなお感染の火の手は収まらず、企業の営業自粛、学校の休止など、いわゆる三密回避の状態が続いています。そんな中、私なりに注目したことがありましたので、ここにご紹介します。
まず、先月11日の午後のこと、NHKテレビで放映中の「100分de名著カミュ『ペスト』(再放送)」にくぎ付けになりました。
カミュといえば、学生時代に『シーシュポスの神話』を読んで、なんとなく“不条理”を理解した気になって、『異邦人』『ペスト』と進むうちに理解不能・・・、挫折したことがありました。その『ペスト』が新型コロナウィルスの感染拡大により、世界的に異例の増刷、売上げに及んでいるというのです。
早速、テキストを取り寄せ、改めて『ペスト』の奥深さを知ることとなりました。ここでは、ネット検索から下記を紹介します。
「NHKおうちで学ぼうfor School名著77ペスト」“プロデューサーAのおもわく”より(第2回 神なき世界で生きる【語り】抜粋)
ペスト蔓延の中で、市民たちは未来への希望も過去への追憶も奪われ「現在」という時間の中に閉じ込められていく。ペスト予防や患者治癒の試みがことごとく挫折する中、現実逃避を始める市民に対して神父パヌルーは『ペストは神の審判のしるし』と訴え人々に回心を迫る。その一方で、保健隊を結成しあらん限りに力をふりしぼってペストとの絶望的な戦いを続ける医師リウーやその友人タルー、役人グラン、脱出を断念し彼らと連帯する新聞記者ランベール。彼らを支えたのは、決して大げさなものではなく、ささやかな仕事への愛であり、人と人とをつなぐ連帯の感情であり、自分の職務を果たすことへの義務感だった」(講師:学習院大学教授 中条省平氏)と、ありました。
次に、24日TBSテレビ放映の『金スマ』で、XJAPANのYOSHIKI氏は、自らの波瀾万丈の人生を振り返ったスペシャル番組を終えた後で、ロサンゼルスから「(略)神は耐えられない試練を人には与えない。僕はその言葉をいつも信じて生きてきました。(略)一日も早い夜明けが来るように頑張りましょう」と新型コロナウィルス緊急メッセージを伝えました。
それよりも前の、18日から合計6回にわたって放映されている『JIN―仁―レジェンド』(パート2)で、喜市(きいち)少年に「生きていれば笑える日がきっと来る。神様は乗り越えられる試練しか与えない」(せりふ)と、言わせています。
そういえば、去年の2月には、白血病と診断されたことを公表した水泳の池江璃花子選手が自身のツイッターで「自分に壁はないと思っています」とつけ加え、また大けがでシーズンをフイにしたスケートの羽生結弦選手も同様に、この“試練”を口にしています。
出典は、『旧約聖書』(出エジプト記)中、エジプトからのカナン(約束の地)へ向かうモーゼ率いるイスラエルの民を、彼らの犯した罪ゆえに40年間にもわたる流浪生活を強いた“試練”についての記述、『新約聖書』(使徒パウロによるコリントの信徒への手紙一10章13節)で、次のようにあります。
あなたがたの会った試練で、世の常でないものはない。神は真実である。あなたがたを耐えられないような試練に会わせることはないばかりか、試練と同時に、それに耐えられるように、のがれる道も備えてくださるのである。」と。
以上、引続きお一人おひとり様のかけがえのない人生をお預かりすることを義務づけられた、福祉法人としての使命を補強する意味合いをこめて、引用させていただきました。
親愛会では、法人内各施設長ら管理職をメンバーとした経営会議を中心に、新型コロナウィルスに関する情報交換、対応策などをめぐって、週を重ねて、その具体策の精度を高めています。
私たちは、緊急事態宣言下(特定警戒県)の1か月を終え、引続き5月末日まで延長の警戒態勢が続く中、時に“ゴールの見えないマラソン”を強いられているような焦燥感にかられることもあるかと思われますが、役職員一同、今後とも法人理念でもある「生きるをお支えする」ことに全力を傾ける覚悟です。
(理事長 矢部 薫)