”雪の八ヶ岳連峰”~戸口元施設長の写真展~

先月の、ある日曜日の昼前のこと、折から雨模様の川越駅東口は、連日のコロナウィルス流行報道の影響もあってか、いつもより観光客の数が少ない。
2月の1週間を会期に、駅前アトレビル6階ビーポケットにて開催された写真展は、川越親愛学園(現、川越親愛センター)第3代施設長であった戸口正夫氏が、長年活動されてきた写真の同好会“川越やまぶきフォトクラブ”の『第17回写真展』でした。
当日は最終日。会場入口で係に、「戸口さんの写真を楽しみで来ました」と挨拶すると、「午後には、いらっしゃると思います」と返事があって、作品の一つひとつを、時に写真技術、時に撮影地でのエピソードを交えながら、丁寧にご案内いただきました。私は、今なお関東甲信から岐阜県にまで広く活動(取材)されている本クラブ員のキャリアを称えると、「今でこそ、(近場だけ車で行って、)電車バスの旅も多くなりましたが、戸口さんには、ずいぶん遠くまで連れて行ってもらいました」と、彼は感慨深げにうなずいていました。
戸口元施設長の写真を紹介しますと―、雪の枯野(防風林)に沿うように点在する牧場や民家の広がりの奥にどっかりと鎮座した峰々、作品『雪の八ヶ岳連峰』は、先生持ち前の、写真を越えてこちら側に空気感を余すところなく漂わす作品です。私にとって、紅葉木立のあでやかさを切り取った作品『湖畔の彩色』と合わせて、かつて親愛南の里施設開設時にいただいた4枚組『春夏秋冬』の作品群をほうふつとさせるものでした。
続く、作品『シャレーポピーの丘』『天空のネモフィラ』は、それぞれの上部を区切る丘の稜線にまで続く、赤、そして青の花の大群落が、空の青さとあいまって見る人の心を圧倒します。
そして、作品『渋峠の夜明け』は、画面下半分に、近くの山々から浅間山のような特徴(台形)のある山並みへとそのシルエットが黒々と重なり合い、上半分の朝焼けの大きな空は、朱から黄色へとグラデーションをなして、ひたすら美しい作品でした。
夜になって先生からお礼の電話がありました。私は「都合で、午前のうちに鑑賞させていただいて、先生にご挨拶もせずに会場を後にしてしまって申し訳ありませんでした」とお詫びしました。
そして、「先日の俳句会の席で、ことぶき生活支援センターの村上施設長からご案内いただきました。その村上さんにしても「偶然に前を通ったらやっていたので」とのお話でしたが、せっかくの機会ですから、祝日明けには戸口先生を存じ上げる職員に声をかけさせていただきました」と前置きし、少し作品について感想を述べさせていただきました。
先生は、「もう、(来世も)そこまで来ているので・・・」などと謙遜されておられましたが、私にとって、戸口先生のご健在ぶりを証明するに余りある作品展でした。
何より、これまで先生が出会われた人たちの、だれもが口をそろえる“高潔の士”の、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。
(理事長 矢部 薫)