この春、子どもたちは~感染症対策休校~

今年の春休みは長かった。
突然、あるいは新聞・テレビの報道を追うかのように、新型コロナウィルス感染症対策として、当地の小中学校も3月1日をもって<休校>となってしまったのです。日本国中の子どもたちが限られた家庭での生活を強いられることになったのですから、大変です。
さっそく、隣に住む孫の小学生は、「コロナだから」などと言いながら、それでも弟の保育園児と連れ立って、毎日のように、家の敷地内をいつも以上にぐるぐると探索して回っていました。時に気晴らしになればと誘った、家内の“泥まんじゅう作り”にはあまり興味を示さず、勝手に庭のあちこちを堀っくり返して水路を作り、橋を架けては、寒暖の差の激しい春先にあっても水遊びに明け暮れたのでした。
そんなある日、「ニホントカゲを捕まえた!」と飼育箱を見せにやってきて、それを皮切りに、多いときは箱に恐竜のような不遜な面構えが4匹、5匹・・・。結果、朝から晩まで餌となる小さなバッタなどの虫取りが始まって、それまでの日課に取って代わっていきました。
ついでに、私たちの早朝散歩に誘ったところ、季節外れの虫取り網をかついでついてきたので、見知らぬ散歩者からも「元気ですね!」と声がかかったものです。(※これで、2か月以上は持ちこたえられたのだと思います)
そして、2人とも、私が教えた麦笛をどうにか吹けるようになって、加えて四つ葉のクローバー探しも板についてきた矢先の、ある朝のこと、少し道を外れて草の生い茂る畑に足を踏み入れた兄の小学生が引き返してきて、「鳥が死んでる!」と言う。急いで行ってみると、明らかにカモ(鴨)がくちばしを先に投げ出し地面にうっ伏していて・・・、でも、時折、目ばたきをしているのです。
どう見ても衰弱しきっていて、頭上には近くを走る送電線から数羽のカラスの鳴き声が聞こえてきます。「(野生のことだ)、そっとしてあげよう」ということになって、私たちはクローバー探しを切り上げて、散歩にもどりました。
「ああ、カモはまもなくカラスに見つかって食べられてしまうだろう。動物病院に連れて行くとしても、この辺の病院は犬猫専門で野生動物は診てもらえるかどうか分からない。その上、今日は日曜日・・・、休診のところも多いだろう」などと、私の独り言・・・。
あきらめかけた、とその時、「いや待てよ、智光山公園の動物園に持ち込めば診てもらえるかもしれない」。引き返して、カモのもとへ急いだのです。
「暴れてはいけないから」と、私が野球帽で目隠しをしようとしたところ、カモは少し首を上げて、体勢はそのままにして、右翼でバシッ、バシッと鋭く抵抗(反撃)・・・。その反動で体がよじれて、左翼の傍らから羽毛の敷き詰められた巣の一部と、中に卵が5つ6つあるのが見えたのでした。
ここは草畑といっても、まわりはサトイモ・大根などがすくすくと育っている畑作地帯のど真ん中。それに、地形上は不老川に沿ってつかず離れず細長く伸びた河岸段丘の丘陵部・・・、名ばかりの一級河川から5百メートルも離れていて、間には家々の並んだ集落もあるし、朝夕には交通量がにわかに増える主要幹線道路も走っている。無事に、ヒナが育って、親子ともども川に戻って、水草を食べるようになる、このことを祈るばかりです。
そんな5月もどうにか終えて、6月を迎え、ようやく学校が再開の運びとなりました。今年度も残り10か月、第2波の感染拡大が懸念される中での再開です。
通学班も再開となりました。私が、「班長は元気?」と聞くと、「班長は、(もう)中学生だよ」と答えが返ってきて、事実上、6月1日が小学2年生の進級日となったことでした。
(理事長 矢部 薫)