親愛会の現状と今後について〜『平成24年度親愛会事業説明会』より〜

4月8日(日)午前10時から、ご利用者家族(保護者)対象の『平成24年度親愛会事業説明会』を開催し、各事業所主任以上の異動を含めた職員紹介と新任職員紹介、そして事業計画説明&質疑応答を行いました。
どうしても都合がつかず、欠席されたご家族もいらっしゃいましたので、理事長挨拶をご紹介します。
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お早うございます。
親愛会ご利用のご家族の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠に有難うございます。
今年は何時までも寒くて、本日やっと桜が満開になったくらいでしょうか。親愛センターの桜も満開です。南の里では、遅れた分、花桃も桜もモクレンも一緒に満開で、大変きれいです。
さて、恒例の事業説明会ですが、本日配布の『法人案内』パンフレットの中に記載されておりますように、昨年7月に、4つ目の相談事業としまして、「子どもの発達支援巡回事業所」を開始したところです。この事業は、保育園や幼稚園の園児のうち、発達に遅れが見られたり、行動に問題が見られた場合に、巡回してその養育のアドバイスをしながら本人の発達を支援していこうとするものです。親愛会としては、成人施設なので日中一時支援で学齢児をお預かりすることはあっても、幼児対象ということでは余り専門性を持ち合わせていないところですが、将来の受け皿から逆に見て、そのためには今何をしたらよいのかということで、出口の見えたアドバイスが得られると、現場の保育士さんからも注目を得るに至っております。
その他、法人も含めて計10事業について、後ほどスタッフの紹介と事業計画を説明させていただきます。
ところで、親愛会が始まって以来まもなく33年、南の里のご利用者では満80歳を迎えた人がいます。親愛センターでも、10年前に比較的高齢なご利用者が南の里へ開設に伴って移動してから、残りの人たちも年齢を重ね、60歳過ぎの人もいらっしゃいます。
特に、南の里ではさらに高齢化、病弱化が顕著で、約半分以上の人たちが、ミキサー食・おむつ・機械浴・車イス・胃ろうなどの支援を必要とする高齢者となっています。このままでは、障がい者支援施設としての機能が果たせなくなってしまう。他方、本来的な介護、特に看取りなどのような高齢者特有の専門性を持たないままにお預かりしてよいのか。そんな危機感から、昨年度、法人の事業計画で高齢者施設について研究を開始したところです。
南の里では、昨年、残念なことに、高齢者が1人、そして、若い人が重度のため十分な治療を受けることもままならずお亡くなりになりました。
その折に、いつも問題になるのが、施設の限界です。もともと障がい者の入所施設は、特別養護老人ホームのように最期の看取りまでを想定しておりませんので、年々多くなる急患の救急車搬送に職員一同背筋を凍らせ、そして誠に残念ながら施設内でお亡くなりになった場合は、その都度、事故であったのかなかったのかが厳しく問われ、警察の立ち入り調査、福祉事務所への事故報告書の提出、場合によっては行政指導を仰ぐ、さらに施設側の過失の有無をめぐって裁判に・・・という事態も懸念されます。残念ながら入所施設といえども、障がい者施設では、生活をお預かりすることはできるけれど、命そのものをお預かりすることはできないのです。
ちなみに、病気入院等に際して、退院後の行く先として親愛センターや南の里の「施設」を挙げられるご家族がいらっしゃいます。ある意味、当然なことと思います。20年も30年もご利用になって、施設といえども友だちの沢山いる「家」なのでしょうし、逆にご自宅は世代替わりが進んで居場所がないという現実もあると思います。
ご承知のとおり、自立支援法になってから、継続更新はあっても基本的には最長3年の契約に基づいて生活の場として入所施設をご利用いただいているのであって、決して家代わりではないのです。もちろん命の取扱いについてご家族の代わりにはなれません。
ですから、退院後の行く先は、基本的にはご家族のいらっしゃる「家」とさせていただきます。そこで、もう一度、退院後のご本人の意思・様子・体調などを考慮して、入所施設を再利用されるか、されないかをご検討いただくことになります。ただし、ご家族のいろいろな状況もおありでしょうが、施設生活上のリスク、現状では守り切れない危険な事態も想定されます。また、そもそも入所施設の命そのものはお預かりできないという限界から、具体的に昼と夜をどうするか、週末をどうするか・・・ご家族と協議し、やむを得ず限定的なご利用、場合によっては契約に至らない場合もあるかと思います。
現在までに、ご家族によっては、退院の見込みがないからといって、入院中のまま退所される方もいらっしゃいます。他方、長い間住みなれたからと言って、最期までとお願いされる方もいらっしゃいますが、障がい者の入所施設にあるのはリスク、事故対応ばかりで、特養ホームのような、最期の看取りの特性は、残念ながらありません。
特に南の里の現状を見るにつけ、改めて、育成会の永遠の課題である「親亡き後」を実感させていただく次第です。いや、親があっても、障がいが重い場合は、家で支えきれないという現状があるかも知れません。
そこで、以上のような現状の打開策として、何よりご家族の最期まで看てほしいとの願いを少しでも叶えられればとの思いで、この3月の理事・評議員会で「特別養護老人ホーム建設計画を進める」ことを議決したところです。
ご承知のとおり、障がい者専用の特養ホームはありません。そのため、1ユニット10人ないし2ユニット20人分は障がい者枠として整備してゆく予定です。
これにより、親愛会では、先ほどご説明した、子供の発達支援巡回事業所から、今後の特養ホーム開設を見ますと、いわば今風の理念「ゆりかごから看取りまで」の体制が揃うということになります。
現在、親愛センターで高齢化した上に、新たな疾患が発生し、いつまでおいてもらえるか不安だ、というご家族もいらっしゃいます。
グループホームとワークス・一般就労等を組み合わせた生活の中でも、60歳を過ぎて、大分足腰が弱ってきているご利用者もいらっしゃいます。
南の里へ移動することも考えられますが、南の里でも、病弱で入退院の多い人や、様々な理由から3年も4年も長い間ショートステイを利用されている人、さらに在宅で入所調整に上がっている人たちを加えて、入所の順番を待っていただいている現状にあります。
また、南の里では、比較的若い人で、重篤な病気のためかなりの衰弱状態にありますが、入院もままならないためご家族と施設で協力し合いながら本人の生活を支えている人もいらっしゃいます。
こうした人たちも、40歳から適用される痴呆・脳血管疾患・パーキンソン病などの介護保険特定疾患の枠内に入ることができれば、親愛会で、新設の特養ホームにつなげることができるのではないかと期待したいところです。
つまり、こうして南の里の高齢障がい者の出口が見えますと、法人全体として、必ずというわけではありませんが、親愛センター・グループホームなどから南の里、南の里から特養ホームへという流れができることになります。
以上、少しばかり挨拶が長くなりましたが、平成24年度の年頭にあたり、理事監事・評議員はじめ職員一同の、特別な思いを寄せた1年の始まりだという説明を含めた挨拶とさせていただきました。
今年度も、よろしくお願いします。
(理事長 矢部 薫)