❝信念と共に若く❞~元職員 吉田郁子さんご逝去~

先月23日に、当法人の元職員吉田郁子さんが逝去されました。
吉田さんは、昭和60年(1985年)に川越親愛センター(当時の「川越親愛学園」)に生活指導員として入職され、のちに主任として勤務されました。
私とは、ペアで遅番・夜勤を組むことも多くて、遅番で9時の引継ぎを過ぎても「やり残したことがありますから、もう少ししてから帰ります」と言って、居住棟内の浴室や洗濯場、それから室内班作業室に戻られることも多かったと記憶しています。
先日、親愛会広報紙『親愛だより』の綴りをめくると、平成元年5月1日(1989年)創刊ですので残念ながら吉田さん入職時の記事は見当たりませんが、「老化度調査」「社会生活能力検査」「口腔保健調査」の報告文があります。そして、平成7年8月に前任者より引き継ぎ全国でもその実績を高く評価された埼玉県心身障害児(者)地域療育拠点施設事業コーディネーター在任中では、「老化の実態とその処遇のあり方について」「ボランティア活動に関するアンケート調査結果」、さらに視察報告「第20回北欧教育福祉事情視察団(その1スウェーデン)(その2デンマーク)」などの充実した記事が目に留まります。
その他にも、当時は、園長以下数名の職員と交替で広報紙上の和顔愛語欄を担当し、また編集委員として私と交互に記した編集後記も含めると、多くの文章を表し、残したことが分かります。
中でも、発刊当初の第3号の和顔愛語欄には、米国の心理学者(詩人)のサムエル・ウルマンの“青春の詩”<青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。優れた想像力、たくましい意志、炎える情熱、安易を捨てる冒険心、こういう心の様相を青春と言うのだ。十六才であろうと七十才であろうと、年齢に関係なく、・・人は信念と共に若く、疑惑と共に老いる。希望ある限り若く、失望と共に朽ちる>を紹介していて、私の記憶に今なお鮮やかです。
そして、自身について「すでに人生の一時期として青春を過ぎた自分が今現在、人生の曲がり角に立ちふっと自分をみつめる時、この詩を口ずさみ生きることへの情熱が消えることのないよう自らをはげますのである。そして自分の心を救うものは自分以外にないと思い定める強さをこの青春の詩から与えられるのである」「一冊の本、一行の文章、一声のことばかけから思いもかけないほどのエネルギーが内からあふれ、自分の人生を大きくひろく豊かにしてくれる」と、続け、ふたたびウルマンの詩に戻って「まさに<大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして偉力の霊感を受ける限り人の若さは失われない>のである」と結んでいます。
40代も後半になって一般企業から転職されて4年目、自らの内にあふれるエネルギー(情熱)をよりどころに、いよいよ本格的に福祉人として歩みだす、吉田さんの50才の決意と、生涯を通したであろう人生観が見えてくるようです。
利用者の皆様にはだれからも“おかあちゃん(吉田母ちゃん)”と親しまれ、一部のご家族には相談の内容一つひとつに真摯に耳を傾け涙する姿から“神様(女神様)”と敬愛された吉田さんの福祉人生16年と、定年退職後は自らの家族のために求められるところ東奔西走の毎日を過ごし、この数年のこと、やっと一息つくも束の間・・、享年80才の生涯でした。
ご冥福をお祈り申し上げます。
(理事長 矢部 薫)