AIの予測する未来~持続可能な社会と福祉~

今年1月1日の朝日新聞一面の記事は、連載記事<エイジングニッポン>③で、少子高齢化・人口減少の極端に進んだ30年後を想定した「2050年AIの予測シナリオは」と題して、京都大学の平井良典教授らが日立製作所の人口知能(AI)を用いて予測した“シナリオ(将来像)”を紹介していました。それによると、私たちが住む、この日本が将来にわたっても持続可能であるためには国の施策とともに「個人の生き方が未来を左右する」というのです。

つまり、2万通りもの予測データから大別した中で、「都市集中型シナリオ」は2050年時点で持続困難で、「地方分散型シナリオ」、すなわち地方を生かしつつ、財政も保つバランスのよい未来こそが持続可能だとしています。そのためには、遅くとも今から7~9年後までには、「地方で生きる若者を増やし、都市と地方が活力を与えあう未来がつくれるか」にかかっているというのです。

ご承知のとおり、国は、第二次安倍政権の政策として2014年9月に「地方創生」を打ち出し、関連法案を成立させたが、その目的である東京への一極集中解消、人口減少の歯止めには、依然としてブレーキがかからない状態が続いています。

そんな現状を打破して、「地方への流れを強化するには人々の価値観や生き方を変える必要がある」(国立社会保障・人口問題研究所 小池司朗人口構造研究部長)との話を引用し、たとえて、脱「終身雇用の昭和型人生」を目指す若者たちを紹介していました。

現在、国は、昨年成立させた「働き方改革関連法」により、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少等の課題解決のため、「多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てる」よう、今春の施行を機に数々の取組みを推進しようとしています。

この記事(シナリオ)のいうところ、私たちは、来年のオリンピックを終えて、遅くともその先10年後までには、個々の生き方もさることながら、その基盤となるライフラインの維持継続と産業労働の枠組み、医療福祉の連携、教育の保障等々が一定の水準を満たした「地方分散型」社会へと大きく舵をきることができるのでしょうか。

そんな課題を多く残す記事でした。

翌々日の3日の一面記事は、連載記事<エイジングニッポン>④で、人口減少社会での労働力確保(代替)のためのAI搭載型のロボット開発(導入)に伴う社会を予測した「進化するAI/人との共生は」と題したシナリオでした。

私たちの介護福祉の現場でも、人の動きを識別し、指示通りに動くAI搭載ロボが、物を運び、食事を手伝う。そんな世界を5~10年先に実現しなければ「人手不足の現場は破たんする」とAIベンチャー、PFNの西川徹社長の話を紹介しています。

加えて、産業用ロボット世界最大手、稲葉善治ファナック会長は、「AIがあれば、ロボットは人間に近い作業が可能になる」と直感し開発に歩を進めたこと。そして、野村総合研究所他の共同研究による報告書「AIやロボットによって職は奪われるのか」の一部を紹介していました。

その報告書によると、2030年ごろには日本の労働人口の49%が、AIやロボットの導入によって自動化される。私たちの福祉現場の職種では、仕事の内容がほぼ決まっている経理事務員、(学校事務員)、給食調理員は極めて高い確率(99%代)でAIやロボットに代替されやすい(職を奪われる)。反面、コミュニケーションや状況に応じる力が求められる医療や保育、介護の現場スタッフは代替されにくい(0%代の代替される確率、つまり職を奪われない)というのです。

そして、野村総研上級コンサルタントの上田恵陶奈さんの「(大切なのは)人とAIとの適切な役割分担。そうすれば、経験のない人でもAIやロボットの助けを借りて介護の業務などにつけるようになる」との話を紹介し、記事を結んでいました。

私たちは、今後の日本の、少子人口減少社会の絶対的な労働力不足にあって、福祉事業を継続するためには、本記事を冷静に読み返してみるにつけ、できるところからAI、ロボットを使った業務の省力化を進めていかなければならないのだと強く思いました。

(理事長 矢部 薫)